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赤い手は滅びのしるし -戦神編- 1章 第3話 —

▼前回までのあらすじ
「ああ あれこそはヘルシアさま必勝の構え ライノズ・ラッシュから悪を討つ突撃のお姿…」


▼参加メンバー

ヘルシア
エオリア
アドリアン
エノーラ
オルト
アシム

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)
「ドレリンの渡し」へ辿り着いた我々は、再び自警団の詰め所へと向かった。
「──かくして、我々はゴブリンの砦と、谷に架かる橋を陥としてきた。
だが、まもなくこの町へとホブゴブリンの軍隊が押し寄せてくるだろう。」
手元の地図が正しければ、ホブゴブリン達はドレリンの渡しを手始めとして、街道の町や村を次々と襲撃するらしい。
ゴブリン共がよほど愚かでもない限りは、この計画を実行するために、かなりの規模の軍隊を準備していると見るべきだろう。
「私では判断しかねる。ウィンストン代表に話をして欲しい。」
警備隊長であるソラナの提案を受け入れ、我々はウィンストン代表を初めとする、町の有力者達との話し合いの席を設けた。
会議の開始まで一時間程度の時間があったので、我々は消費した陽光棒などを補充する事にした。
町の雑貨屋は、この規模の町としては品揃えが豊富なのだと言う。
雑貨屋の女主人は、ホブゴブリンの長剣を引き取ると申し出てくれたが、これから町を捨てさせる事になるかもしれないと解っていて取引をするのは、道義に悖る。
迷いはあったが、主人の人柄に賭けるつもりで、事情を打ち明ける事とした。
女主人は、戦争が起きるのならばブリンドルへ逃げると言った。
話を聞けば、ブリンドルは堅牢な城壁を持つ要塞都市らしい。
戦争が起きるのならば、それは稼ぎ時だと言ってのけた女主人に、商売人の逞しさを垣間見た。
我々は、長剣を引き取ってもらい、大量の装備品を購入した。
やがて会議の始まりを告げる鐘が鳴った。
集まった数人が、口々に提案を投げてきたが、我々の方針は既に決まっている。
この「ドレリンの渡し」を放棄し、一刻も早くブリンドルへと向かうのだ。
川を挟んだこの町は、敵を迎え撃つには良い地形だが、戦力が無くては話にならない。
とは言え、全員を説得するのは少々骨が折れそうだ……そう思っていると、ヘルシアが突如声をあげた。
「橋には、ドラゴンが居た。」
──そうだ。あれはドラゴンだ。決して大きなものではなかったが、ドラゴンに間違いない。
私は、ヘルシアを少し手助けする事にした。
『DM、レベル上がったから〈知識〉再ロールさせて!』
『いいよ。』
『…よし、33まで。』
『じゃあ解る。』
「うむ。あの時は〈知識〉判定に失敗したので薄暗くて良く解らなかったが、ランクが上がって再判定した今思い返して見ればあれは紛れも無くグリーンドラゴンだった。」
ゲラゲラと笑う神託が聞こえたが、何か笑いどころがあっただろうか?いや、無い。
「ド、ドラゴン!!」
一同の顔に恐怖の色が見て取れる。
恫喝のようで気分は良くないが、嘘はついていない……と言うのは詭弁だろうか。
「し、しかし…そのドラゴンを、あなた達は倒したのだろう?」
「相手は、ドラゴンを尖兵として使えるほどの実力の持ち主だと言うことだ。」
皆、黙り込んだ。
「…決断が難しいのであれば、神託を求めましょう。」
オルトの提案により、翌朝、我等が神ハイローニアスに神託を求める事とし、会議は一旦解散となった。
問題は先延ばしされたわけだが、翌日まではまだ少しばかり時間がある。
ウィンストン代表達がどんな決定を下すにせよ、我々は今出来ることをやらなくてはならない。
もっとも犠牲が少なくなる方法を取らなければならないのだ。
私はエノーラと共に、この町に住む占い師の屋敷へと向かった。
大枚を叩いてスクロールとポーションを買い込む。
スクロール・オヴ・フライ
スクロール・オヴ・ファイアボール
ポーション・オヴ・フライ
また、スクロール・オヴ・ヘイストを書いてもらうように頼んだ。
スクロール代以外にも作業代を求められたが、我々にとっては必要な出費だ。
翌日、オルトはひとり部屋へ篭った。
しばらくの後、オルトは静かに扉を開け、神託を告げた。
『戦いに備え、今は力を蓄えよ。』
再び、町の有力者が集められた。
オルトが神託の内容を告げると、一同は沈痛な表情を見せた。
「神官様、ペイロア様はなんと仰っているのでしょう。」
「…私は神託を求めてはおりませんが、多分ハイローニアス様と同じ事を仰るでしょう。」
「…町を出よう。ブリンドルへと向かうのだ。」
一旦町を出ると決めた後の、人々の行動は実に迅速だった。
驚くべき事に、「ドレリンの渡し」の人々は、わずか1日程で町を放棄するための準備を整えたのだ。
何度かホブゴブリンの襲撃を受けていたからだろうか。いつかこのような日が来ると、誰もが思っていたのかも知れない。
ドレリンの川に架かるロープは切り忘れた切らなかった
万が一、対岸に誰かが取り残された時の事を考えれば、切れるはずが無かった。
町の端に集まる荷車の群れを見ながら、私は考えていた。
──いずれ、この地域全体を巻き込む程に戦火が広がる。
確証は無いが、確信があった。


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