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赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第1話 —

▼前回までのあらすじ
「…そう言えば、ジョールさんは?」
「………あ。」


▼参加メンバー

ヘルシア
エオリア
アドリアン
エノーラ
オルト
アシム

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)
「ベッドも部屋も好きに使っておくれ。どうせ持っては行けないんだからね。」
宿の女将の厚意により、我々は久しぶりにベッドで眠ることができた。
翌日の朝。息を切らせて、宿に一人の女性が入ってきた。
「街道が封鎖されている!」
詳しい話を聞けば、この「ドレリンの渡し」の北にある街道と、ブリンドルの北にある街道が、ホブゴブリンの一団により封鎖されているらしい。
コス、そしてホブゴブリンの軍隊と無関係ではあるまい。
彼女はそれを町へ伝えるため、早馬で駆けてきたと言うのだ。
──街道封鎖。
まさか、ブリンドル北の街道にまで手を伸ばしているとは。ホブゴブリン達は包囲網を完成させているのか?
最早、何もかも手遅れなのではないか?そんな考えが頭を過ぎるが、無理矢理にそれを払い除ける。
我々は、彼女に経緯を話し、ゴブリンの地図を渡して、街道沿いの町や村への連絡を頼んだ。
「一刻も早く、ブリンドルへと向かうように」と。
町の端に集められた馬車と荷車が、次々と東へ向かう。
時を置かずして、我々も「ドレリンの渡し」を後にした。
リーガル・プロセッションで馬を喚び、拍車をかけて走らせる。
4時間も走らせたところで、私は馬を降りて再びリーガル・プロセッションを唱えた。
今は一分一秒でも惜しい。我々はただひたすらに街道を東へと走った。
行く先々の町々が、ブリンドルへ向かう準備を進めているのを確認して安堵する。
「ドレリンの渡し」を出てから、およそ3日程で我々はブリンドルへ到着した。
街へ着いて早々に、我々は+1フロスト・バスタード・ソードの引き取り手を捜した。
いくばくかの金貨を手に入れた我々は、いくつかのアイテムを買うために町を走る。
グラブ・オヴ・デクスタリティ(+2)をアシムのために。
高品質の冷たい鉄製モーニング・スターをヘルシアとエノーラのために。
+1ダークウッド製ヘヴィ・シールドをエオリアのために。
また、少々無理を言って、大鏡スクロール・オヴ・スクライングを購入した。
宿を取ってすぐ、呪文書にスクライングを書き写す作業に入る。
この新しい呪文を学ぶために、私は丸一日を費やした。
直ちにスクライングを唱えるが、コスの姿は映らない。
日が悪いのか。あるいは、コスの意思が私の魔法を退けるほどに強いのか。
日を改める事にし、皆には、その間に情報を集めて貰った。
翌日、大鏡を前に、私は再びスクライングを唱えた。
大鏡に何者かの影が映り、それはゆっくりと鮮明さを増していく。
──そのバグベア、『コス』は、「ドレリンの渡し」にいた。
丁度我々が泊まった宿、我々が泊まった部屋で、優雅に酒を飲んでいる。
我々が橋を陥としてから、7日が経っていた。
「ドレリンの渡し」の人々が町を出てから4日。人々が追いつかれる事はない………はずだ。
町々の人々が、無事にブリンドルへ辿り着ける事を神に祈りながら、我々は街を出て北へ向かった。
ホブゴブリンの地図によれば、ずっと北には砦があるはずだ。
街道の封鎖は砦を守るためか、それとも逃げ場を塞ぐためか、あるいはその両方か。
いずれにせよ、このまま放っておく事はできない。
街道途中にある「魔女村」へ寄り、ブリンドルへ向かうように告げ、さらに北、封鎖された街道へと向かう。
街道の途中に、その大きな関所はあった。
遠くてよくわからないが、建物の上の方には小さな人影が見える。
「草原では身を隠す場所も無いな…突っ込むか?」
「いや。関所まではおよそ500フィート。6秒で詰められる距離だ。」
私はフライ唱えてヘルシアを宙に浮かせた。
コンヴィクションを振り準備を整える。
オルトがディヴァイン・パワーを唱えるのと同時に、私達はディメンジョン・ドアの呪文で関所の上に降り立った。
関所を守っていたのは、10程度のホブゴブリンと、2体のオーガだった。
我々の行動は迅速にして冷静、そして非情だった。
私がグリースでオーガの動きを封じている間に、ヘルシアのグレートソードと、オルトのホーリィ・スマイトが敵を悉く打ち倒していく。
1分も経たないうちに、我々は小さな関所を制圧した。
かろうじて息のあったホブゴブリンをキュア・ライト・ウーンズで治療し、話を聞かせて貰うことにした。
「…殺されていないと言うことは、逃がしてくれるという事だな?」
「その通りだ。しかし、その前に少し話を聞かせて貰いたい。」
「俺が知っていることなら。」
「おまえ達は『コス』の仲間のものか?」
「『赤い手』と言うのは何だ?」
「軍隊の規模はどの程度だ?」
「『コス』は知らない!『赤い手』は俺たちの事!俺は下っ端だから軍隊とか解らない!」
「…そうか。手間を取らせたな。さあ、森へお帰り。」
「森?」
「いや、なんでもない」
「覚えてろ!次は無いぞ!」
「…次に会った時には手加減できるとは限らないぞ。」
「…ち、ちくしょう!覚えてろー!」
関所を残しておけば、別のホブゴブリンがやってきて再び街道を封鎖する可能性もある。
少々悩んだが、全てを灰とする事にした。
『燃ーえろよ燃えろーよー♪』
『気をつけないと森が燃えるぞ』
関所から少し離れ、森の中へ入りレオムンズ・セキュア・シェルターを建てる。
我々が眠りに就いていると、壁を引っかく音がした。
……殴ったり体当たりしたり壁を抜けたりしないと言うことは、野生の動物か?
だとすれば、よほどの事が無ければ石壁を破ることは出来まい。だが…。
「──誰だ?」
声をかけると、引っかく音はぴたりと止み、何者かが逃げる足音が聞こえた。
だが、しばらくすると再び引っかく音が聞こえてくる。
しばらく黙って様子をみると、やがて音は壁を殴る音へと変わった。
「誰だ!」
声をかけると、再び音は止み、足音は逃げる。
どうやら、音の主は我々を素直に寝かせてくれる気は無いらしい。
ヘルシア、オルト、エノーラが鎧を身に着ける時間があったのは幸いだった。
準備を整えた我々が、扉を開いて外へ出ると、正面に何か大きな動物の影が見える。
陽光棒を炊いて投げると、それはジャイアント・アウルだった。
「ジャイアント・アウル…?決して邪悪な生き物では無いはずだが…。」
「──様子を見てきます。」
ヘルシアとエノーラが慎重にジャイアント・アウルへ近寄る。
「既に息絶えています……何かに齧られた様な痕が」
その時、右手の方向、闇の中で何かが動いた。
緑色の鱗と、見覚えのある角。剃刀の様に鋭い翼。
「グリーンスポーン・レイザーフィーンド!?」
緑竜の血を引く剃刀の魔獣が、恐るべき速度で我々に接近する。
アシムの眼前に迫った魔獣は、大きく口を開けた。
──まずい!
とっさににわかの移動でシェルターの中へ飛び込む。
その直後、目の前が酸の飛沫で満たされた。
強敵だ。運の悪いことに、我々には呪文もそう多く残っていない。
1体とは言え、これまでに出会ったどの怪物より強い。油断をすれば、命を落とすのはわれわれの方だ。
だが、魔獣が幾度か吐いた酸のブレスも、その鋭い翼の強烈な一撃も、我々を打ち倒すにはわずかばかり足りなかった。
ビナイン・トランスポジションでアシムとヘルシアを入れ替え、戦線を構築する。
オルトとエノーラがキュア・モデレット・ウーンズキュア・ライト・ウーンズを唱え傷を癒す。
隙を見て唱えたサドン・マキシマイズ・ファイアボールが魔獣を包み、ヘルシアとオルトの剣が止めを刺した。
我々が、魔獣の持っていた小さな宝箱を開く頃には、夜が明け始めた。
宝箱の中身は、レイピアが1本、ヘッドバンドが1つ、大ぶりの真珠が1つ、指輪が1つ、そして金貨が少々。
真珠はおそらくパール・オヴ・パワーだろう。(〈呪文学〉DC30の試行錯誤に成功)
他は、アイデンティファイを唱えてみなければ解らない。
手持ちの真珠は無いため、町へ戻らなくてはならないが…そんな時間は無い。
まだシェルターは数時間は持つ。一眠りして、頭をはっきりさせてから考えようか…。
気を緩めかけたその瞬間、大きな羽音が聞こえてきた。
「ジャイアント・アウル……誰か乗っています」
「…グルガック!この森はワイルド・エルフの縄張りだったのか!」
5羽のジャイアント・アウルと、それに乗るグルガック達は、統制の取れた部隊の様にも見えた。
彼らは我々に構わず、ジャイアント・アウルの傍へと降り立ち、その足環を確認した。
隊長と思しき女性の支持で、4人のグルガックは我々の横を通り過ぎ、魔獣の腹を裂き始める。
「…ありました。」
その指には、銀色の印章指輪が摘まれていた。仲間が、犠牲になったのだろう。
「弟の仇を取ってもらったようだ。礼を言おう。」
「森を焼いてしまった。すまなかったな。」
「なぜ、この森に?」
「詳しく話せば長くなる。我々はホブゴブリンと敵対する者。北の砦へと向かう最中だ。」
「…詳しい話を聞かせて貰いたい。今アウルを呼ぶ。我々の集落へ案内しよう。」
「世話になる。」
我々は、ジャイアント・アウルの背に乗り、空へと舞い上がった。
「──ところで、君達は真珠を持ってはいないかね?」
私が少しばかりの真珠を飲んでアイデンティファイを唱えたところ、次のようであった。
+2レイピア
ヘッドバンド・オヴ・インテレクト+2
リング・オヴ・プロテクション+2
パール・オヴ・パワー(2nd)
これらの品々が、我々の身を助けてくれることを願っておく。


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