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赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第2話 —

「ところで、我々はこれから何をすればいいんだろうか?」
『お前ら物語を端折りすぎなんだよ!』
※今回ちょっと長めです。(実プレイ時間7時間程度)


▼参加メンバー

ヘルシア
誰もが認める必殺の一撃を持つダメージディーラーにしてパーティのリーダー。
エオリア
パーティ最高のACを誇る壁。
オルト
魔法と打撃で遠近攻守を兼ねる万能型。
アシム
弓の一発は当たれば大きいが…。そのうち大化けするか?
アドリアン
何の変哲もない召喚術専攻のウィザードですよ?
エノーラ
回復の要。だけど回復以外は割とショボめ。

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)
グルガックの集落でしばしの休息を取った後、長老と会う事ができた。
その年老いたグルガック──ティリ・キトルの長老は、セリリアと名乗った。
我々は、目的と今起きている事件を正直に告げた。
『赤い手』と呼ばれるホブゴブリン達の大進軍が始まっていると言うこと。
いずれ、彼等はこの地方全てを手中に収めるつもりだと言うこと。
我々には、協力者が必要であると言うこと。
「あなた方の言い分は解りました。ですが、我々も今問題に直面しているのです。」
「問題──とは?」
「北西には、『レストの廃墟』と呼ばれる場所があります。今は、水に沈みつつありますが、あの場所は神聖なる土地。そこは現在、リザードフォーク達の縄張りとなっています。」
「…ふむ。そのリザードフォークが、あなた方の言う『問題』だと?」
「いいえ。リザードフォークだけでは無いのです。ホブゴブリンの族長が住み着いたとの話を聞いています。」
「ホブゴブリン。ホブゴブリンは我々の敵です。見過ごしておく訳には行きませんな。」
「……そして、恐るべき事に、パトロールの最中に、ドラゴンを見た者がいます。」
「…ドラゴン。水生と言うことは黒か緑。」
「手強いですが、何とかならない相手ではないでしょう?」
「…その黒い翼を広げた姿は、アウルよりも大きかった、との報告がありました。」
一同に、戦慄が走る。
「──超大型……マチュア・アダルト・ブラック・ドラゴン!?こんな場所に!?」
『このレベル帯にマチュア・アダルト・ブラック・ドラゴンはねーよ。何かインチキしてるはずだ。年齢上げずに強大化でサイズだけ上げるとかしてるんじゃねーの?あるいはドラゴンっぽい何か。』
『それならなんとかなるか…?』
『マジでマチュア・アダルトだったらどうする?後半に会う予定だったりするとか。』
『確認だけして撤収ってのは?レベル上がったら殺りに来ようぜ。』
『でも退くなんてありえないね!善として!』
『く。秩序にして善じゃなければ!』
『でも秩序にして善じゃなければ既に全滅してるぜ。』
…神託の主は秩序にして善なるものでは無かったのだろうか…?いや、考えるまい。
「……厳しいな。一筋縄ではいかん。ヘルシアのライノズ・ラッシュを載せた一撃を2発叩き込んでもまだ足りんだろう。」
「我々が立っていられて10秒そこそこ。20秒は持たないでしょうね。」
「一瞬で決着を付けなければやられる…か。残念ながらヤツの結界を打ち破るには呪文が足りん。もう少し真面目に呪文を学んでおけば良かったか……ん?」
ちょっとメタり過ぎた。気がつけば、セリリア達が呆然と我々を見ている。
「…ん……いや、すまなかった。我々は、こうやって戦い、生き延びてきたのだ。」
「我々が信用できないかもしれないが、我々の腕は信頼して頂いて結構。」
「邪悪なホブゴブリン、そしてドラゴンが居ると聞いた以上は、我々は放ってはおけないのです。」
「……わかりました。あなた方が、レストの脅威を取り除いてくださったのなら、我々もそれに応えましょう。」
「我等が神、ハイローニアスの名に賭けて。」


湿地帯を越え、『レストの廃墟』が近づいてくると、小さな小屋がいくつか見て取れた。
ティリ・キトル達の話によれば、小屋には見張りのリザードフォークが居るはずだ。
我々が小屋へ近づくと、小屋からリザードフォークが飛び出して来た。
「逃ゲロー!」
彼等は、そのまま湖に飛び込んで消えた。
「…逃げられてしまったな。」
「あんな臆病な種族が、なぜエルフと敵対を…?」
「他にも小屋があるはずだ。そちらで話を聞いてみよう。」
別の小屋の扉を、我々は堂々とノックした。
中からガタガタと言う音が聞こえるのを確認し、ヘルシアが扉を開く。
「ギャー!タスケテー!」
「いやまて、我々は君達と争うつもりはない!」
「…本当カ?『冒険者ガ狩リヲシテイル。注意シロ。』ト聞イテイル」
「…その冒険者の数は6人だったりするのか?」
「6人ダ!(即答)」
「いや、偶然にも我々も6人だが、その冒険者とは違うぞ。」
『ねーよ!〈はったり〉振れよ〈はったり〉!』
『くそ!振ってやる!俺たちはモンスター狩りなんてしてねぇ!余裕!……出目17!』
『〈真意看破〉……出目1!』
『wwwwwwwwww』
「ソウカ!良カッタ!狩ラレルカト思ッタ!オ前達ハ違ウンダナ!」
「うむ。我々は善なるものだ。おまえ達に危害を加えようとは思わない。」
「オ前達モ、我々ノ神、リジャイアリクス様ニ、会イニ来タノカ?神ノ使イニナリニ来タノカ?」
「神と言うのは…もしや、ドラゴンか?黒かったか?どこにいるんだ?」
「ドラゴンダ!黒イ!具体的ニハ③ニイル!」
「(〈偽造〉判定で絵を描く)神の使いとやらは、こういう姿をしていたか?」
「ウム、ソレッポイ!具体的ニハ②ノ鐘楼ニイル!」
『やっべー…マジでブラック・ドラゴンいるねコレは。』
『既に奴等はドラゴンと手を組んでるのか?』
『マチュア・アダルトはぶっちゃけ勝てないよなぁ。』
『でもマチュア・アダルトがブリンドルに来たら詰みだぜ。一般人は恐怖のオーラに抵抗できん。』
アセイ・スペル・レジスタンスを覚えておくべきだった…。』
『こいつら(リザードフォーク)は?』
『説得は無理かなぁ?』
神託が随分と具体的になってきた。
「そうか…ところで我々は、その狩りをしている6人の冒険者かも知れん。」
「ナ、何ダッテー!?騙シタ!?騙シタナ!狩ラレル!助ケテー!?」
「いや落ち着け。我々は君達と戦いたくは無い。邪悪なブラックドラゴンを許してはおけないだけなのだ。」
「……善トカ悪トカ、ソンナモノ関係ナイ。我々ニトッテ、竜ハ神ナノダ。」
「…そうか。解った。我々は君たちの『神の使い』とやらを倒しに行かねばならない。その時に立ち塞がるのならば、打ち倒していくまでだ。」
湖へと飛び込んでいくリザードフォークを見送りつつ、我々は算段を立てた。
『区域移動なら…毎分400ft?5分ぐらいで行けるのか。バフ(強化魔法)かけていけるな。』
ウォーター・ウォーキングウォーター・ブリージングは準備してきてる。』
『相手にキャスターがいるとヤバイなぁ。水上でのディスペルは即死できる。』
『5分もありゃ決着は着く。10分呪文まではかけていけるな。』
『レベル分呪文は500ftまで寄った所でかけるのはどうだ?』


ホブゴブリン達が居るという鐘楼を目指して、湖の上を急ぐ。
水上に突き出た鐘楼まで残り500ft程度と言うところで、高らかに鐘が鳴り、矢が飛んできた。
鐘楼の周囲には、多数のリザードフォークが顔を出している。やはり、戦いは避けられないのか。
「恐れるな。この距離ではそうそう当たらん。」
呪文で強化し、私とヘルシア、オルトがディメンジョン・ドアで鐘楼へ飛び込む。
二人の剣が唸り、ホブゴブリン達は10秒もかからずに打ち倒された。
『キャスター居なかったな。』
『居ないはずは無いんだがなあ…。』
『まあ、ホブゴブリン死んだ時点で、大方決着は着いたんだが…。』
『リザードフォーク達は死ぬまで戦うよ!』
『くそう、リザードフォーク多過ぎるよ!』
『お前らが各個撃破しないからだろ!』
『それは仕方ない!俺達は戦意の無い連中を斬る剣は持ち合わせちゃいねー!何故なら秩序にして善だからー!!』
「もう止めろ!我々は君達と戦いたくは無い!」
私の声は空しく響くだけだった。リザードフォーク達はヘルシアの一撃で次々と湖に沈んでゆく。
「止めるんだ…君達では勝てない!」
「……我々ハ神ヲ守ル為ニ戦ウ戦士ダ。戦士ニハ情ケハ要ラナイ!」
「……そうか。ならば、決着を付けよう。ハイローニアスの名の下に!」
全てのリザードフォークを打ち倒した後、息があったものを鐘楼へ引き上げ、キュア・ライト・ウーンズで傷を癒す。
「……ナゼ、助ケタ。」
「我々は君達と戦いたくないと言っただろう。」
「ダガ、我々ハ神ヲ冒涜スル者ヲ許シテハオケナイ。」
「……そのドラゴンが、本当に君達の神であれば、の話だな。」
「ツマリ?」
「本当にドラゴンだったかどうかすら、定かではないという事だ。」
「ソノ証ヲ立テル事ガデキタナラ、アキラメヨウ。ダガ……」
「……その時は、恨んでいいぞ。」
ティリ・キトルの集落へ戻り、ドラゴンと決着を付けるための算段を練る。
覚悟は決まった。勝てるかどうかは解らないが、今更退くわけにはいかないのだ。


『天気決めてくれ。D100で。』
『あ、90。』
『……マジで?』
翌日は、激しい雨が降っていた。
グリーンスポーン・レイザーフィーンドによって殺された哀れな魂を見送る葬式が終わり、葬送の宴が始まった。
故人を偲び、語らいを続けるティリ・キトルの人々を後に、我々はそっと集落を出た。
ウォーター・ウォーキングウォーター・ブリージングコンヴィクションフライマジックウェポンブレス・ウェポンミラー・イメージシー・インヴィジビリティ等、かけられる限りの呪文をかける。
勝負は出会い頭。秒殺するかされるかだ。
「──行くか。」
後悔しなくていいだけの準備をし、湖の中央にあるドラゴンの巣へ向かう。
マス・レジスト・エナジーの属性は?』
『酸。できれば火も。』
『火?火は必要か?』
『酸以外に何か飛んでくるとしたら火しかない。』
神託が聞こえたのだろう。オルトが酸と火に対する防御を固め、ウォーター・ウォーキングウォーター・ブリージングはエノーラが準備していた。
石造りの建物の周辺で、2人のオーガが見張りをしているのが見えた。
瞬時に打ち倒し、階段を昇り扉の前へ詰める。
ヘルシアのアダマンティン・グレートソードが石の扉を切り開くと、奥から4体のオーガが飛び出してきた。
階下へ続く大穴と、階段が見える。
フライのかかったヘルシアが穴の上に陣取り、オルトとエオリアが二手に分かれて階段を下りる。
「──巨人が!?」
「──ティアマトのクレリック!」
階下から悲鳴が上がる。クレリックとは…予想外だ。
同時に、ヘルシアに向けて階下から何者かが刃を振るっている。…フライか?キャスターがいるのか?
我々の意識が完全に階下に向いたその瞬間、我々の後を追うように何者かが飛び込んできた。
「……グリーンスポーン・レイザーフィーンド!こんな所にも居たのか!」
ヘルシアがライノズ・ラッシュと叫び駆ける。
その悪を討つ突撃が、レイザーフィーンドの胸に深々と食い込んだ。
私は大穴に向けてウェブを放ち、階下の何者かの足を止める。
レイザーフィーンドが大きく口を開け、酸のブレスを放つ。
寸前に、私はにわかの移動で射程外へ逃げる。
フィーンドのブレスに耐えたヘルシアが、続く一撃でその首を切り落とす。
2撃。我等がハイローニアスの騎士は、たった2撃で魔獣を仕留めて見せた。
階下にいたのは、エティンとホブゴブリンのファイター、そしてクレリック。
ヘルシアがエティンを打ち倒したところで、階下に轟音が響いた。
──これは、フレイム・ストライク!!
『読み勝った!』
『だが半分は信仰ダメージ!18点貫通!』
『HP-6。倒れた。』
エノーラの悲鳴が聞こえた。
階段の下で、オルトがスタッフ・オヴ・ライフを掲げるのが見える。
私が階下へ降りた直後、何者かもまた、逆側から降りてきた。
「──ブラック・ドラゴン!」
大きさこそ中程度だが、紛れも無くブラック・ドラゴンだ!
ヤツは大きく口を開き、酸のブレスを放つ。
その大半はマス・レジスト・エナジー:アシッドで食い止められるが、飛沫の幾らかが皆の肌を焦がす。
見れば、ブラックドラゴンの上に載ったゴブリンが、弓を引き絞っている。こいつが、サールヴィスか?
グリッターダストでサールヴィスの目を潰す。
盲目のゴブリンが放った矢は、壁と床を削るに留まった。
隣の部屋から、呪文を唱える声が聞こえる──サモン・モンスターⅣか!
ここにモンスターが召喚されれば、戦局が一変する可能性がある…させるわけにはいかない!
隣の部屋へ駆け込み、スクロールを広げているクレリックの姿を確認する。
ワンド・オヴ・マジック・ミサイル(9th)を振るか?
いや、万が一にも仕留めそこなうわけにはいかない。ここで放つべきは最大の一撃だ。
私の唱えたサドン・マキシマイズ・ファイアボールは、ティアマトのクレリックを瞬時に炭へと変えた。
隣の部屋では、ヘルシアがゴブリンのアーチャーに渾身の一撃を叩きつけていた。
『出目20!ブレスウェポンでクリティカルしました!』
『即死。』
「──サールヴィス!!」
ゴブリンの断末魔の悲鳴を聞いて、ブラック・ドラゴンが叫ぶ。
やはり、奴がサールヴィスだったか。では、このドラゴンがリジャイアリクスなのか?
サールヴィスを倒され、リジャイアリクスは突然逃げにうって出た。
フライによるものだろうか、尋常でない速度で部屋を飛び出していく。
だが、ここで逃がすわけにはいかない。
私はディメンジョン・ドアでヘルシアとオルトを連れて上空へ。
即座にフェザー・フォールを唱えて速度を殺す。
リジャイアリクスを発見したであろうヘルシアが、ライノズ・ラッシュと叫ぶのが聞こえた。
『強打……2点!』
『ああああ1足りねえええ』
水音が聞こえた。リジャイアリクスが水中へ飛び込んだのだろう。
仕留めそこなったか。残念だが、仕方あるまい。
スクライングの触媒となる血は充分以上に手に入れた。いずれ追撃するとしよう。
その後、我々はサールヴィスの寝所を捜し、少々の財宝と、一通の手紙を見つけることになった。
『経箱を死霊王に渡してはならない』
──リッチ。あの忌むべき存在が、この地域にも居ると言うことか。
ホブゴブリンと敵対するものであれば、一時的にとは言え、我々の味方になってくれる可能性もある。
たとえ相手が、邪悪なるアンデッドだったとしても、最後の手段として考えておかねばなるまい。
私にとっては、騎士の誓いや神の教えよりも、人々の命が大切だ。
……だが、ヘルシアを説得するのは骨が折れるだろうな。
我々が、ティリ・キトルの集落へ戻った時には、葬送の宴がまだ続いていた。
降り続く雨が、我々の血の匂いを洗い流してくれた事には感謝しなければならない。


Categorised as:赤い手は滅びのしるし


One Comment

  1. 飛竜/いしやまより:

    ああっ、逃がした!惜しい!

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