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赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第6話 —

▼前回までのあらすじ

『とりあえずリジャイアリクスと再戦といくか』
『経箱が手に入らない事実に対する現実逃避とも言える』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

早朝、出発の準備をしている我々の元へ現れたのは、ミハ=セレイニだった。
彼女は赤手の本陣に潜り込み、情報を集めてくるつもりだと言うのだ。
「……赤手の本陣に潜り込むだと?馬鹿な、自殺行為だ」
「大丈夫ですよ。こう言うの、得意なんです。それに……」
「……それに?」
「私も、この街の”獅子”ですから」
『ちょww死亡フラグ立てにきやがったwww』
『ここに来て足を引っ張るつもりか……!?』
神託が不安そうだ。私も不安だ。
彼女はおそらく、いや多分間違いなく死ぬ。
だが、止めても無駄なのだろう。彼女の目が、そう言っていた。
「呪文で馬を出すんですよね。1頭貸してもらえますか?」
「それは構わんが……9時間程で消えるぞ」
「好都合です」
ブリンドルの市門で馬を出し、我々は北へ。ミハは西へ。
我々は振り返らなかった。

再戦

リーガル・プロセッションによる早馬を使い、駆けること2日。
再度レストの廃墟にたどり着いた我々は、ウォーター・ブリージングウォーター・ウォークを使い、公会堂へ突入した。
公会堂の内部にはホブゴブリンとオーガが待ち受けていたが、対した脅威ではない。
グリースグリッター・ダストで制圧し、リーダーとおぼしきソーサラーをヘルシアが両断すると、残されたホブゴブリン達は武器を捨てた。
「……降伏する。命は助けてもらえるんだろうな」
「勿論だ。我々も、戦う気が無い相手を斬るつもりはない」
「命を奪うつもりはないが、いくつか聞きたい事がある」
「……我々に解る事であれば」
「リジャイアリクスはここにいるのか?」
「わからない。だが、我々はリジャイアリクス様に呼ばれて集まった」
「赤手の本軍について、何か知っている事は?」
「解らない。我々下っ端には何も教えられていない」
「元々、我々は西の街道を封鎖していた部隊だ。進軍にも参加していない」
「……お前達がここまで来たときの船があるだろう。それでここを離れるんだ」
「できるなら、赤手の本隊には戻るな。次に会った時に手加減ができるとは限らない」
ホブゴブリン達が船で離れたのを確認し、再度公会堂の中へと戻る。
リジャイアリクスが居るとすれば、おそらくは水の中だ。
『潜るしかないか』
『正直、水中は辛いんだよなあ……呪文が効かないし』
『最終的にヘルシアの一撃に頼るしかないのはいつもの事』
『ヘルシアにだけはフリーダム・オヴ・ムーヴメントだな』
私のファイアーボールブラスト・オヴ・フレイムは、水中で使うには難がある。成功率は8割程度と言ったところか。
しかし、リジャイアリクスとやりあうならば、万が一にも失敗はできない。
なんとかして、水上におびき寄せたいところだが……難しいだろうな。
『水中で飛行移動速度って有効なのかね』
『有効なはず』
『P.91を見る限り、立ちすくみになってもいいなら飛べるっぽいな』
『キャスター組は立ちすくんでも構わんだろ』
「潜るぞ。アドリアン、フライはあるか?」
「巻物を使っても3人分といったところだな」
「なら、エオリア、アシム、エノーラは上で待っていてくれ」
「……解った。最悪の場合は、2人を連れて上に跳ぶ。準備だけはしておいてくれ」
ヘルシアにフリーダム・オヴ・ムーヴメントを掛け、3人で水中へ飛び込む。
前に潜った時よりは、視界は幾分かマシなようだ。
「お前達か」
水中に声が響いた。竜独特の発声は、リジャイアリクスに相違あるまい。
「……近いぞ」
不慣れな水中を探りつつ、リジャイアリクスの姿を探す。
公会堂の中には見あたらない。だとすれば、外か。
「大きくなっているかもしれん。アドリアンは退がっていろ」
切り落とされた扉のすぐ向こうで、奴は我々を待ち受けていた。
気付いたヘルシアとオルトが盾になり、私は2人を壁に距離を取る。
だが、奴は水中に漂っているばかりで、襲ってくる気配を見せない。
「……なぜ構えない?」
「何をしに来た。経箱はもうここにはないぞ」
「お前達の”子”が孵るのを黙ってみてはいられんのでな」
「……なぜ、その事を?」
「私の知らぬ事など無いよ」
『超人発言キターwww』
……敵対する者と交渉する場合には、はったりの1つや2つは必要だ。
「そうか……だが、”子”も経箱も、俺にはもう関係が無い事だ」
「……何?どういう事だ?」
「俺は赤手を抜けた」
よく見れば、リジャイアリクスの鱗に刻まれた赤手の紋は、醜い傷跡で隠されていた。
『……え?』
『何この超展開』
……何が起きているのだ?
赤手を抜けた、というのはどういう事だ?

挑戦

「……どういう事だ」
「俺とサールヴィスは、赤手の為に命を賭けてきた。」
「だが、奴等はサールヴィスを弔おうともしなかった」
「サールヴィスの居ない今、赤手の連中に従う理由も無くなった」
『あー……なるほど』
『戦争中だし、仕方がない事ではある……が』
『納得はできないだろうなぁ』
複雑な心境だ。
敵対した以上仕方ないとはいえ、サールヴィスを殺し直接の原因を作ったのは我々だ。
だが、ここでそれを明らかにすると言う事は……
「お前が赤手を抜けたと言うのなら、我々がお前と戦う理由は無くなる」
「……が、お前は戦うつもりなのだな?」
「ああ。俺が勝てるかどうかはわからないが、サールヴィスの仇を取らずに去る事はできない」
やはり、弔い合戦……しかも、自身と我々の力量を知った上でなお戦うつもりなのか。
どうやら、このリジャイアリクスを普通のブラック・ドラゴンと考えてはいかんようだ。
「そのパラディンと、一騎討ちがしたい」
「……断る理由は何もない。受けて立とう」
ドラゴンとの一騎討ちなど、通常は考えられない事だが。
こう出られたのであれば、ヘルシアは断るまい。

決戦

『イニシアチブ振るのはヘルシアだけ?』
『うむ』
『ここに手は出せんよなぁ』
戦いは、およそ30秒ほどで決着がついた。
ヘルシアは善戦したが、相手が竜では手数で劣る。
虎の子のストーン・スキンは絹のように引き裂かれ、ヘルシアの身体が血に染まる。
『くそっ、先にバフ全部掛けておくんだった……!』
『一騎討ちを挑まれるとは思ってなかったからな……』
『挑まれてから掛けるのはハイローニアスの教えに反するから仕方ない!』
解っている。解ってはいるが……今、ここでヘルシアを失う訳にはいかんのだ!
『DM!次ラウンドから俺も動く!イニシアチブを振る!』
私が走り出すのよりわずかに早く、リジャイアリクスの爪がヘルシアを切り裂く。
ヘルシアの身体が力を失い、前のめりに倒れる。
(──いかん!)
直感的に悟る。これでは間に合わない。
私が何をするより早く、奴の翼と牙はヘルシアの身体から魂を引き剥がす。
……そう、思ったのだが。
何が起きたのか、奴の翼が叩き付けられる前に、私の手はヘルシアに届いた。
すかさずディメンジョン・ドアで引き剥がす。
オルトがキュア・クリティカル・ウーンズを唱えるのを見ながら、私はリジャイアリクスに相対した。
「……続けるのであれば、ここから先は私が相手になろう」
決死の覚悟だったが、リジャイアリクスは首を横に振る。
「……得られる物は何もなかった。もういい」
「鐘楼の下にある物はお前達の好きにするがいい」
そう言うと、リジャイアリクスは小さく加速をつけ、空へ舞い上がった。
みるみるうちにその姿は小さくなり、やがて北へ向かって動き始める。
ヘルシアが目を覚ましたのは、リジャイアリクスの姿が見えなくなってからだった。
「……私は、負けたのか」
「ああ……負けた」
「なぜ、生きている?」
「奴が……リジャイアリクスが、翼を止めた。そう見えた」
「……そう、か」
「なぜ、リジャイアリクスは止めたんでしょうね」
「さあな。私にも解らん事はある」
「いずれ、再戦する事になるのかな」
「さあな。」
鐘楼の1階部分へ潜ると、リジャイアリクスの残したと思われる財宝と、いくつかの奇妙な卵が見つかった。
「どうする?」
「これからあの落とし子共が生まれるかと思うとぞっとせんな」
「なら、割るまでだ」
すべての卵をたたき割った我々は、ティリ・キトルの集落へ向かう事にした。
ホブゴブリン達の使っていた小舟が残っていた事は幸いだった。
その晩、我々は夜遅くまで寝る事ができなかった。
私はもっと強くなる事を誓い、一人目を閉じていた。
おそらく、他の皆も同じだろう。


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