『しかし冷酷に”じゃあダイス振れよ”と言われてしまうのがD&D』
『甘いッ!〈交渉〉はキッチリとランク振ってあるッ!』
『……すげぇ!?パラディンがちゃんと〈交渉〉取ってる!?』
『完璧だwww感動したwwwwww』
(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)
その晩、我々はハンマーフィスト氏族の元で一晩の宿を借りた。
ジャルマース卿への報告は、一刻も早いほうがよいだろうが、生憎と呪文が残っていない。
ジョールは、ハンマーフィストの戦士達の先導役として残ってくれると言う。
我々はジョールを置いて、一足先にブリンドルへ帰還する事にした。
『じゃあ詰める(テレポートの目標数を減らすためにバッグ・オヴ・ホールディングに入って貰う)か』
『詰めはじめるとNAGOYAだなって気がするよね』
『だってどう頑張っても4人しか飛べないんだもん』
……NAGOYA。何のことだろうか。
よくはわからないが、あまり良さそうな意味ではないな。
ブリンドルに帰るとすぐ、オルトはディヴィネーションの準備を始めた。
死霊王と戦うとなれば、我々は赤手との戦争に参加できなくなるかもしれない。
その危険を冒してまで、死霊王と戦うべきか否か。
結局、我々は結論を出せなかったのだ。
幸いであったのは、我々の信ずるものが同じである事だ。
思考停止と揶揄されるかも知れないが、ハイローニアスの神託を拒否するものは我々の中にはいない。
教義を違えるものたちは、こう言う時どうするのだろう、と考えると妙な気持ちになった。
やがて、オルトは扉を開き、我々に信託の結果を告げた。
「ハイローニアス様は”時を待て”と仰いました。経箱は程なく我々の手に入る、と」
「……どういう事だ……?」
全員がしばらく黙り込む。
ハイローニアスの言う事に間違いはないだろうが、ただ待っていれば経箱が手に入る、などという都合のよい話は信じがたい。
やがて、誰ともなくポツリ、とつぶやいた。
「……まさか、ミハが?」
その場にいる全員が、顔を見合わせた。
「……ああ、ミハからは毎日連絡が入っているが」
ジャルマース卿の一言は、我々に衝撃を与えるのに十分すぎた。
正直に言えば、私はいずれミハを救出しに行かねばならぬと思っていた。
『ミハ、何者だ?』
『赤手に潜り込んで無事とか只者じゃねーwww』
「……彼女が、無事だとは思いませんでした」
「……ああ、まったくだ」
「確かに、普段は遊んでいるように見えるが、彼女の実力は確かなのだよ」
我々のつぶやきを聞いて、ジャルマース卿が少し困ったような顔で弁護する。
「して、ミハは何と?」
「うむ……。何日か前の手紙からになるが……」
曰く、”経箱”とか言うものが赤手の本軍に運ばれてきた、と。
曰く、たいへん慎重に扱われているらしい、と。
曰く、よくわからないけど手に入らないかどうか試してみる、と。
微妙な空気が室内に流れた。
『ねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『わかれよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『なんだよこいつwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
「……成功、するのでしょうね」
「……ああ、ハイローニアスがそういうのだ、成功するのだろう」
「……ハイローニアスを疑うわけではないのですが、にわかには信じがたいですね」
「……言うな」
『まあ、神託なら信じていいんだろうなあ』
『信頼できるとすると、ミハは信用できねーな』
『なぜ?』
『信頼できるヤツは信用できない。信用できるヤツは信頼できない。コレNPCの鉄則』
「……とりあえず、ミハに連絡を取ってみるか」
「センディングですか?」
「いや、スクライングを通す」
「……あまりいい趣味とは思えませんが」
「……仕方あるまい。センディングでは伝わりきらん」
その後、我々はミハの毛髪(と思われるもの)を手に入れた。
宿に入るのも女性陣に任せたし、ちゃんと各所に断りを入れて回った上の事だ。
……本人には、何も言ってないのだが。背に腹はなんとやら、だ。
『いくぜ……毛髪らしきものを使ってスクライングだ!』
『セーヴ…………1!』
『ちょwww毛髪いらねーじゃんwwwwww』
『まあ、そんなもんだwww』
十分ほどの後、我々は皆、頭を抱えていた。
スクライングとメッセージの結果、ミハと話をする事はできたのだが、彼女の現状は我々の予想の斜め上にあった。
「えーと……今は馬車を改造した牢の中にいますー」
『ちょwwwwww』
「一応、出れなくはなさそう?なのでがんばってみますー」
『ねーよwwwなんだよそれwwwなんだよこいつwwwwww』
「経箱?とか言うのは偉い人が首から下げてるみたいなので、貰ってみますー」
『うはwwwwwwおkwwwwwwwwwwww』
「……待つしか、ないな」
「……そうだな」
「どうしましょう?無為に待つだけというわけにも」
「……死霊王への足がかりだけでも作っておくか」
ハンマーフィストの氏族館へとテレポートし、リーガル・プロセッションで駆けること数時間。
我々は、”いばらの荒れ野”の端に辿り着いた。
「……これは、予想以上の難所だな」
「”いばらの荒れ野”の名前通り、ですね」
目の前に広がるのは、荒れ果てた大地。
見渡す限りの岩と石、そして無数の茨。
人の住めぬ自然が、そこにはあった。
近くの茨に近寄り、指で撫でてみると、小さな痛みと共に血が流れる。
厳しい自然と動物の捕食に耐えるためか、茨の先は刃のように尖っていた。
「……多少痛いが、我慢できん事はないな。毒もなさそうだ」
そうつぶやく頃には、すでに指の傷は癒えている。
マス・レッサー・ヴィゴーが、傷を塞いでくれるのだ。
今の我々の身体には、通常では考えられぬ程の活力が満たされている。
「行くぞ。茨は馬の肌を貫く程ではない」
だが、この時私は忘れていた。
見渡す限りの茨と岩は、身を隠すのには絶好の場所だという事を。
そして、奴は現れた。
私の身体を、衝撃が貫く。
馬が何かに躓いたのか、私は空中に投げ出された。
かろうじてバランスを取り、地面に降り立ったところで、体中の痛みに気付く。
焦げ臭い匂いが立ち込め、そこではじめて、電撃を受けたのだと理解した。
振り向くと、大岩の影から濃青色の鱗と長い首──ビーヒア。
だが、奴の背中には一対の翼──ハーフフィーンド。
「大丈夫か!」
「ブレスはしばらく無い!”一撃”に気をつけろ!」
私の他に電撃を受けたのは2~3人か。
馬は絶命しているが、皆の命には別状は無いようだ。
オルトがリサイテイションを唱え、皆を護る。
エノーラのキュア・シリアス・ウーンズを確認し、私はフライを唱えた。
この時、私は敵の力量を見誤っていた。
いや、慢心が我々を過大評価させていたのかも知れない。
まさか、あんな事になろうとは。
Categorised as:赤い手は滅びのしるし
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