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『赤い手は滅びのしるし』カテゴリーの記事

赤い手は滅びのしるしメモ:6枚目 —

ブリンドル地図とメモ。

▼ブリンドル市街地図

①:門
東、西、南に1つずつある。”獅子”が駐留しているのもこの場所だ。
②:宿屋『石竜亭』
我々の拠点だ。代金は前払いして部屋を確保してある。テレポートで戻ってくるのもこの場所だ。
③:未踏
④:シャンクの刃物屋
⑤:青空市場
もはやすっからかんだ。
⑥:酒場『呑み足りないゾンビ亭』
あいにく我々には酒を飲んでいる時間はない。
⑦:赤の魔法雑貨店
イマースタルが留守の時を狙って訪ねる必要がある。
⑧:ヤンダーラの杜
よく考えれば行ったことがないな。
⑨:酒場『おくびょうガラス亭』
⑩:ヴェロリアン劇場
よく考えれば行ったことがないな。
⑪:ブリンドル学院
学生達も戦争に駆り出されるようだ。
⑫:酒場『笑うマンティコア亭』
あいにく我々には酒を飲んでいる時間はない。
⑬:カールの屋敷
大きな屋敷だ。主であるカール女史もただ者ではない。
⑭:未踏
屋敷が建っているが、我々には縁がなさそうだ。
⑮:棺桶屋
大繁盛のようだ。仕方のないことだが。
⑯:聖堂広場
マンティコアが飛び込んできたのがここだ。
⑰:ペイロア大聖堂
“黄金の眉持つ”トレドラも普段はここにいるようだ。
⑱:ブリンドル砦
ジャルマース卿の住む砦だ。
⑲:未踏
大きな屋敷のようだが、我々には縁がなさそうだ。
⑳:ブリンドル墓地
世話にならぬように気をつけなくてはな。
㉑:ウィー・ジャス寺院
彼らもまた、ブリンドルのために力を尽くしているようだ。

ブリンドル地図とメモ。 ▼ブリンドル市街地図 ①:門 東、西、南に1つずつある。”獅子”が駐留しているのもこの場所だ。 ②:宿屋『石竜亭』 我々の拠点だ。代金は前払いして部屋を確保してある。テレポ […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 3章 第4話 —

▼前回までのあらすじ

『レベル上げたいよ!一人だけレベル低いのツラいよ!』
『うーむ……確かに。戦争に入る前にレベルは上げておきたい……』
『日数は余りまくってるから、蝕を喚ぶか?』
『蝕は喚んでおこう。24時間化したマス・レッサー・ヴィゴーがあれば連戦もいける』
『あ、24時間化だけど、リサイテイションにしないか』
リサイテイション……攻撃、AC、セーヴに+3幸運ボーナス……!?』
『なん……だと……!?』
(※蝕を喚ぶ:経験点目的にランダムエンカウントを誘発する事を指す某所の造語。大抵裏目に出る)

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

経箱

「……半信半疑だったが」
「現実になるとは思わなかったな」
翌日、我々の手元には経箱があった。
牙で作られた首飾りのようなそれからは、死霊術に疎い私にも判るほどの力が感じられる。
ミハは「上手に盗み出してきた」と言ったが、私にはそうは思えなかった。
昨日、アルワイは経箱を手放すつもりだと言っていた。
赤手どもは一度ミハを捕らえておきながら、わざわざ経箱を与えて開放したのだ。
……なぜだ?
経箱を持ち続けていれば、死霊王本人を動かす事もできたはずだ。
竜魔将共は、わざわざ切り札を捨てた事になる。
それとも、経箱を持ち続け……死霊王を”使う”事に、何か問題があったのか?
アルワイの口調からすれば、死霊王を完全に制する事はできていなかったようだ。
いつ牙を剥くか分からない死霊王よりは、ボーンドリンカーの方が使いやすいと考えたのだろうか。
あるいは……死霊王を、我々に始末させようと言うことなのか。
我々と死霊王を争わせ、戦力を削ろうと考えていてもおかしくはない。
「では、死霊王を討ち倒しに行くとしよう。経箱があれば容易い事だ」
「……ヘルシア、少し待ってくれ」
「アドリアン、まさか、臆したのか?」
「違う。だが……ここで死霊王と戦うのは、得策では無いかも知れんのだ」
「オルト。先日の神託で、ハイローニアスは何と言っていた?」
「死霊王とは交渉の余地があるかと尋ねたところ”是”と」
「……だからと言って、リッチを見過ごすことはできない。違うか?」
「討ち倒すだけならいつでもできる。我々の目的は、リッチを倒す事ではなく──」
「──この戦争に勝つ事、か」
「そう言う事だ。とりあえずは、スクライングで様子を伺うとしよう」
「……素直に交渉に応じてくれればいいがな」
「応じなければ、その時は討ち倒す。それで良いだろう」

死霊王

「……見えたぞ、死霊王だ」
経箱を手に取り、大鏡の前でスクライングを唱えること1時間。
暗い石造りの部屋の中に、干乾びた人影が見えた。
「……行くか?」
「いや、様子がおかしい……」
部屋の中でため息を吐き、傍らにうずくまるライオンのゴーストを撫でる死霊王。
ライオンは死霊王を慰めるかのように擦り寄るが、死霊王はがっくりと肩を落としつぶやく。
「……儂の経箱は、もう戻ってこんだろうな……どうしたらいいんじゃろうな……」
『なんぞこれwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『死霊王カワイソスwwwwwwwwwwwwwwwww』
『なんでこんな凹んでるんだよwwwwwwwwww』
「どうした、アドリアン!何が見える!」
「……ううむ、いや……なんと言ったものか」
「何があったのですか!」
「……少し、死霊王と話してみる」
「何だ!何があったんだ!」
「アドリアン!何が起きているのか説明を!」
『どうするこれwwwwww』
『どうするって言われても……どうしたらいいんだよwww』
『このまま死霊王殺っちゃう?』
『いや、それは酷過ぎるwwwwww』
『これは和解しておきたいなwww』
皆の呼びかけを聞き流しながら、あらかじめ準備してあったメッセージでの通話を試みる。
「死霊王……死霊王よ」
大鏡を指差しつぶやくと、死霊王は顔を上げた。
どうやら、術を通す事には成功したらしい。
「……誰だ?」
「あなたの、経箱を持つもの。ハイローニアスの信徒です」
ガタン、と死霊王が立ち上がり、あたりを見回す。
「な……なぜ、儂の経箱を!?」
「赤手の者から、経箱を奪いました」
「儂の経箱を、どうするつもりだ……?」
「あなたに経箱を返そうと思っておりますが」
「何……?」
死霊王の顔色は変わらないが、言葉の節々には戸惑いが感じられる。
無理も無いだろう。本来ならば、この経箱は即座に破壊されて然るべきなのだ。
「……儂に、何かしろというのだな?」
「そちらへ伺います。詳しい話はそれからにしましょう」
「わかった……ライオン達には手を出さぬよう言いつけておく」
『……死霊王、案外いいヤツじゃね?』
『いや、それは……どうだろうwww』
『でも、経箱返せばずっと引きこもってそうだなぁ』

交渉

「──何もするな、と?」
「そう。我々と赤手との戦いに不干渉であって貰えればそれで良いのです」
「そんな事で良いのならそうしよう。儂は、経箱が戻って来るならばそれで良いのだ」
実を言えば、死霊王との交渉には少なからず不安があった。
死霊王を目の当たりにしたヘルシア、オルトあたりが剣を抜くのでは無いかと思っていた。
だが、実際に相対してみれば、そんな事は杞憂に過ぎなかった。
経箱を失った不安と、赤手との交渉で精神をすり減らた死霊王には、もはや誰かと争う気力も残っていなかったのだ。
ペイロアの信徒達ならば、死霊王の存在そのものを許すことは無いのだろう。
だが、我々はあのような狂信者とは違う。
戦う意思の無い相手に、我々の刃が向けられる事は無いのだ。
「では、この経箱はお返ししましょう」
死霊王に経箱を手渡し、我々は遺跡を後にした。

▼前回までのあらすじ 『レベル上げたいよ!一人だけレベル低いのツラいよ!』 『うーむ……確かに。戦争に入る前にレベルは上げておきたい……』 『日数は余りまくってるから、蝕を喚ぶか?』 『蝕は喚んでおこう。24時間化したマ […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 3章 第3話 —

▼前回までのあらすじ

『……ガチで死霊王殺りにいくか?』
『ちょっと経験点が必要になったからな』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

死霊王の根城

翌日。我々は再び茨の荒れ野に挑み、死霊王の根城を目前にしていた。
途中、数度に渡りライオンのゴーストが行く手を阻んだが、我々は止まることなく進み続けた。
「……これは、一度見たら忘れられんな」
テレポートで戻ってこられそうですか?」
「間違いなく」
死霊王の根城は、伏せたスフィンクスを模した大きな遺跡だった。
胸の部分には、15ftほどの穴が開いており、中には青い鱗が何枚か落ちている。
おそらくは、昨日のビーヒアのものか。
「入り口は……上か」
スフィンクスの口にあたる部分へ、フライディメンジョン・ドアで降り立つと、喉にあたる部分に扉が見える。
エオリアが扉の様子を調べ、そして硬直した。
そっとこちらを振り返り、扉を2度指差し、手で扉を押さえる真似をする。
(中から 誰か 扉を 抑えている)
フル・プレートの重い金属音が響く。
ヘルシアが一歩前に踏み出し、扉を強引に押し開く。
ゴブリンの後ろ姿が、あっという間に闇の中へ消えていった。
「……赤手の者か」
「行くぞ。おそらく、罠は無い」

撤退

螺旋階段を下りると、そこは一面霧に包まれていた。
濃密な霧は視界を遮るが、何も見えなくなるほどのものではない。
オブスキュアリング・ミストだ……呪文使」
次の瞬間、扉が勢い良く開かれ、数人のホブゴブリンが飛び込んできた。
奴等は妙な鎖のような武器を持ち、我々に組み付こうと強引に突進してくる。
普段の我々であれば、恐れるには足らぬ相手だが、ゴーストとの戦いで我々は疲弊していた。
「降伏なさい!」
扉の向こうから、呪文を唱える声とは別の声が聞こえる。
多少高く聞こえるその声は、おそらくホブゴブリンの女性のものだ。
苦戦は必死だろうが、降伏を受け入れるほどに勝ち目が無いわけではない。
視界を確保するため、ブラスト・オヴ・フレイムを唱える。
轟音と共に業火が吹き荒れ、霧が焼き払われると、ホブゴブリン達の形相が変わる。
彼等は自分の身が傷つくのを厭わず、我々を取り押さえようとしていた。
扉の向こうから、再度悲鳴のような声が聞こえる。
「死霊王の怒りに触れるわ!諸共に焼き払われたくなければ、帰りなさい!」
……今、なんと言った?
死霊王は、赤手の連中と手を結んでいるのでは無かったのか?
様子がおかしい。奴等も、完全に死霊王を掌握しているわけではないのか?
『……どうする?』
『万全ならともかく、ここに死霊王が加わると2人死ぬ』
『目的(テレポートの下見)は達成してるし、ここは受け入れるべきか』
「……いいだろう、今日のところは退こう!」
叫ぶと同時に一歩下がり、バッグ・オヴ・ホールディングを大きく開くと、その中にエオリアとアシムが飛び込んだ。
すかさずテレポートを唱え、我々はブリンドルへ撤退した。
余談だが、バッグ・オヴ・ホールディングを買って以来、人間か死体のどちらか以外を入れた事がない。
NAGOYAと言う単語が、時々聞こえるような気がする。
「あの声は……竜魔将だったのでしょうか?」
「……おそらくは。あの声の主が、アルワイなのだろう。例の手紙の主だ」
「少々毛色が違う相手のようですね」
とはいえ、敵には違いない。
声の主を明らかにするべく、スクライングを唱えると、アルワイの姿が映る。
比較的整った顔立ちをした、女性のホブゴブリンがそこにいた。
ホブゴブリンにしては、美人の部類に入るのだろう。
彼女の傍らには、身体の焦げたゴブリン達が寝かされていた。
まったく動かないところを見ると、死んでいるのだろう。
私の炎は命を奪うまでには至っていないはずだが……まさか、死霊王にやられたのか?
アルワイがゴブリン達を弔い始めたところで、その姿がぼやけて消えた。
「……敵に、借りができてしまったな」
「……戦場で会う前に、もう一度アルワイと話をしておきたい」
「明日、もう一度行くとしよう。スクライングを通すのはそれほど難しくない」
どちらにせよ、1日は休息が必要だ。我々は疲弊しすぎていた。
ペイロアの信者達とは違い、我々はアンデッド共との戦いを得意としているわけではない。
ゴーストの歪な生命力は、確実に我々の生気を蝕んでいた。
翌朝、レッサー・レストレーションレストレーションで力を取り戻した後、再度スクライングを唱える。
アルワイは砂漠を行軍していた。
引きずるような足音がいくつも聞こえる。
ゴブリンではないようだが、何か連れているのは間違いないようだ。
「行くぞ」
テレポートを唱え、私と、オルトと、ヘルシアの3人だけが、再び茨の荒れ野に降り立った。

撤退

アルワイは、奇妙なクリーチャー達をつれていた。
あれは確か、ボーンドリンカーというものだ。戦力として死霊王から借り受けたものなのだろう。
本来であれば、討ち倒さねばならぬ相手だが……。
我々の姿を確認すると、アルワイはボーンドリンカーを後ろに下げ、一人で前に出た。
こちらも、ヘルシアが一歩前に出る。
「竜魔将アルワイだな」
「……私を倒しに来たの?」
「いや。少し、聞きたい事がある」
「なぜ、あの時に警告した?」
「死霊王の力は私達の手には余るもの。彼をあまり刺激するのは得策ではないの」
「経箱はおそらく、近いうちにあなた達の手に渡る。私達の目的は達したわ」
「……”それ”がそうか」
「あなた達の相手にはならないでしょうけど」
「他には?もっと聞きたいことがあるのではないの?」
「本当なら、な。だが、私達には借りがある」
「次は、戦場で会おう」
「ええ」
結局、テレポートでその場を後にした。
戦えば討ち倒す事は容易だったが、我々の信念と信仰が、それを許さなかった。
「……厳しい戦争に、なりそうだな」

▼前回までのあらすじ 『……ガチで死霊王殺りにいくか?』 『ちょっと経験点が必要になったからな』 ▼プレイリポート(以下アドリアン視点) (プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください) 死霊王の根城 翌日。我 […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 3章 第2話 —

▼前回までのあらすじ

『俺は良心的プレイヤーを辞めるぞ!DMーッ!』
『俺はNAGOYAになるッ!この《信仰力呪文修正:呪文24時間持続》でだァーッ!!』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

失策

我々が瞬時に体勢を立て直したのを見て、ハーフフィーンド・ビーヒアは逃げの姿勢に転じる。
背中の翼が大きく動き、その巨体が浮きあがった。
逃がすわけにはいかない。ビーヒアが死霊王と手を結んでいる可能性もある。
多少無理をしてでも、ここで討ち倒しておかなくては。
今、我々の行動を気取られるわけにはいかないのだ。
「上を取るぞ!」
ヘルシアとオルト、そしてエノーラを引き寄せ、ディメンジョン・ドアでビーヒアの頭上へ。
即座にフェザー・フォールを唱え速度を殺す。
オルトがシアリング・ライトを放つ。
ビーヒアは苦し紛れにダークネスを唱えるが、エノーラのデイライトが闇を打ち払う。
これで、王手。続く一撃は、ヤツの首を切り落とすだろう。
私の期待に応えるかの様に、ヘルシアがグレート・ソードを担ぎ叫ぶ。
ライノズ・ラッシュ!」
『じゃあ機会攻撃から組み付きに入る』
『げ。つかみ強化かよ!』
『やべぇ、呑まれた!』
『ぎゃあああ!?』
ヘルシアの剣が届く寸前、ビーヒアが大きく口を開く。
次の瞬間、ヘルシアの姿が消えた。
──まずい!
『やばい、死ぬ!これはマジ死ぬ!』
『癒しの手は!?』
『……間に合わない。直前の酸ダメージでhp-10になる』
『……だめだ、詰んだ』
ヘルシアを飲み込んだビーヒアは、そのまま空を飛び去ろうとする。
その背後から放たれたアシムの弓が、ビーヒアを撃ち落とす。
「ヘルシア……!」
「何と言う事だ……」
急いでその腹を切り裂いたが、既にヘルシアは事切れていた。
ヘルシアの遺体を腹の中から丁重に救出し、バッグ・オヴ・ホールディングへ詰め、テレポートを唱えた。
フリーダム・オヴ・ムーヴメントをかけるべきだった……!』
『ヘルシア実はACもhpも低いからな……』
『パーティ全体が攻撃偏重だしなぁ……』

再起

誰も、口を開こうとしなかった。
常日頃から、死は覚悟している、と自負してはいたが、象徴であるヘルシアの死は、予想以上に重いものだった。
私とて、それは例外ではなかった。
だが、ここで挫折するわけにはいかない。
ブリンドルの、人々の運命が、かかっている。
再起しなくてはならない。そして、戦争に勝利する事で取り返すのだ。
自分にそう言い聞かせ、心の表面を塗り固める。
私の……いや、我々の心は、折れてはいけないのだ。
「オルト。リザレクションの準備をしてくれ」
「……呪文は、準備できますが……ダイヤモンドが必要です。そして、私達には……それだけの資金がありません」
「金貨は200枚足らずを残して、全部使ってしまいましたよ」
「捻出したとしても……この先戦えなくなってしまう」
私は立ち上がり、傍らのヒューワーズ・ハンディ・ハヴァサックを手に取る。
小さな皮袋を取り出し、テーブルの上に白金貨を積み上げると、皆の目が丸くなった。
「白金貨で500枚ある。明日の朝までに、ダイヤモンドを調達してくる」
「……どこから、そんな大金が?」
「我々は手に入れた白金貨には1枚も手をつけていなかった、という事だ」
皆が溜息をつき、苦笑する。
苦笑とはいえ、笑顔は笑顔だ。
「……参りましたね」
「……欺いていたのは敵だけでは無かった、と言うことか」
「何を人聞きの悪い事を。ハイローニアスに誓って、私は嘘は吐いておらんよ。金貨と銀貨が何枚あるかは、常に答えておったしな」
『パーティの財布たる者は、本当の所持金を明かしてはならない』
『彼等は常に最後の1cpまで使ってしまおうとするからだ』
そんな話を聞いたのはいつの事だったか。
誰から聞いたかも覚えていないが、薀蓄は私の中に生き、こうして役に立っている。
「……何にしろ、私達にはまだやれる事がある……そうですね?」
皆の目に輝きが戻ったのを確認し、私は小さく頷いた。

▼前回までのあらすじ 『俺は良心的プレイヤーを辞めるぞ!DMーッ!』 『俺はNAGOYAになるッ!この《信仰力呪文修正:呪文24時間持続》でだァーッ!!』 ▼プレイリポート(以下アドリアン視点) (プレイ結果を元に捏造分 […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 3章 第1話 —

▼前回までのあらすじ

『カッコいいロールプレイキター』
『しかし冷酷に”じゃあダイス振れよ”と言われてしまうのがD&D』
『甘いッ!〈交渉〉はキッチリとランク振ってあるッ!』
『……すげぇ!?パラディンがちゃんと〈交渉〉取ってる!?』
『完璧だwww感動したwwwwww』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

帰還

その晩、我々はハンマーフィスト氏族の元で一晩の宿を借りた。
ジャルマース卿への報告は、一刻も早いほうがよいだろうが、生憎と呪文が残っていない。
ジョールは、ハンマーフィストの戦士達の先導役として残ってくれると言う。
我々はジョールを置いて、一足先にブリンドルへ帰還する事にした。
『じゃあ詰める(テレポートの目標数を減らすためにバッグ・オヴ・ホールディングに入って貰う)か』
『詰めはじめるとNAGOYAだなって気がするよね』
『だってどう頑張っても4人しか飛べないんだもん』
……NAGOYA。何のことだろうか。
よくはわからないが、あまり良さそうな意味ではないな。

神託

ブリンドルに帰るとすぐ、オルトはディヴィネーションの準備を始めた。
死霊王と戦うとなれば、我々は赤手との戦争に参加できなくなるかもしれない。
その危険を冒してまで、死霊王と戦うべきか否か。
結局、我々は結論を出せなかったのだ。
幸いであったのは、我々の信ずるものが同じである事だ。
思考停止と揶揄されるかも知れないが、ハイローニアスの神託を拒否するものは我々の中にはいない。
教義を違えるものたちは、こう言う時どうするのだろう、と考えると妙な気持ちになった。
やがて、オルトは扉を開き、我々に信託の結果を告げた。
「ハイローニアス様は”時を待て”と仰いました。経箱は程なく我々の手に入る、と」
「……どういう事だ……?」
全員がしばらく黙り込む。
ハイローニアスの言う事に間違いはないだろうが、ただ待っていれば経箱が手に入る、などという都合のよい話は信じがたい。
やがて、誰ともなくポツリ、とつぶやいた。
「……まさか、ミハが?」
その場にいる全員が、顔を見合わせた。

驚愕

「……ああ、ミハからは毎日連絡が入っているが」
ジャルマース卿の一言は、我々に衝撃を与えるのに十分すぎた。
正直に言えば、私はいずれミハを救出しに行かねばならぬと思っていた。
『ミハ、何者だ?』
『赤手に潜り込んで無事とか只者じゃねーwww』
「……彼女が、無事だとは思いませんでした」
「……ああ、まったくだ」
「確かに、普段は遊んでいるように見えるが、彼女の実力は確かなのだよ」
我々のつぶやきを聞いて、ジャルマース卿が少し困ったような顔で弁護する。
「して、ミハは何と?」
「うむ……。何日か前の手紙からになるが……」
曰く、”経箱”とか言うものが赤手の本軍に運ばれてきた、と。
曰く、たいへん慎重に扱われているらしい、と。
曰く、よくわからないけど手に入らないかどうか試してみる、と。
微妙な空気が室内に流れた。
『ねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『わかれよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『なんだよこいつwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
「……成功、するのでしょうね」
「……ああ、ハイローニアスがそういうのだ、成功するのだろう」
「……ハイローニアスを疑うわけではないのですが、にわかには信じがたいですね」
「……言うな」
『まあ、神託なら信じていいんだろうなあ』
『信頼できるとすると、ミハは信用できねーな』
『なぜ?』
『信頼できるヤツは信用できない。信用できるヤツは信頼できない。コレNPCの鉄則』
「……とりあえず、ミハに連絡を取ってみるか」
センディングですか?」
「いや、スクライングを通す」
「……あまりいい趣味とは思えませんが」
「……仕方あるまい。センディングでは伝わりきらん」

念視

その後、我々はミハの毛髪(と思われるもの)を手に入れた。
宿に入るのも女性陣に任せたし、ちゃんと各所に断りを入れて回った上の事だ。
……本人には、何も言ってないのだが。背に腹はなんとやら、だ。
『いくぜ……毛髪らしきものを使ってスクライングだ!』
『セーヴ…………1!』
『ちょwww毛髪いらねーじゃんwwwwww』
『まあ、そんなもんだwww』
十分ほどの後、我々は皆、頭を抱えていた。
スクライングメッセージの結果、ミハと話をする事はできたのだが、彼女の現状は我々の予想の斜め上にあった。
「えーと……今は馬車を改造した牢の中にいますー」
『ちょwwwwww』
「一応、出れなくはなさそう?なのでがんばってみますー」
『ねーよwwwなんだよそれwwwなんだよこいつwwwwww』
「経箱?とか言うのは偉い人が首から下げてるみたいなので、貰ってみますー」
『うはwwwwwwおkwwwwwwwwwwww』
「……待つしか、ないな」
「……そうだな」
「どうしましょう?無為に待つだけというわけにも」
「……死霊王への足がかりだけでも作っておくか」

いばらの荒れ野

ハンマーフィストの氏族館へとテレポートし、リーガル・プロセッションで駆けること数時間。
我々は、”いばらの荒れ野”の端に辿り着いた。
「……これは、予想以上の難所だな」
「”いばらの荒れ野”の名前通り、ですね」
目の前に広がるのは、荒れ果てた大地。
見渡す限りの岩と石、そして無数の茨。
人の住めぬ自然が、そこにはあった。
近くの茨に近寄り、指で撫でてみると、小さな痛みと共に血が流れる。
厳しい自然と動物の捕食に耐えるためか、茨の先は刃のように尖っていた。
「……多少痛いが、我慢できん事はないな。毒もなさそうだ」
そうつぶやく頃には、すでに指の傷は癒えている。
マス・レッサー・ヴィゴーが、傷を塞いでくれるのだ。
今の我々の身体には、通常では考えられぬ程の活力が満たされている。
「行くぞ。茨は馬の肌を貫く程ではない」
だが、この時私は忘れていた。
見渡す限りの茨と岩は、身を隠すのには絶好の場所だという事を。
そして、奴は現れた。

奇襲

私の身体を、衝撃が貫く。
馬が何かに躓いたのか、私は空中に投げ出された。
かろうじてバランスを取り、地面に降り立ったところで、体中の痛みに気付く。
焦げ臭い匂いが立ち込め、そこではじめて、電撃を受けたのだと理解した。
振り向くと、大岩の影から濃青色の鱗と長い首──ビーヒア。
だが、奴の背中には一対の翼──ハーフフィーンド。
「大丈夫か!」
「ブレスはしばらく無い!”一撃”に気をつけろ!」
私の他に電撃を受けたのは2~3人か。
馬は絶命しているが、皆の命には別状は無いようだ。
オルトがリサイテイションを唱え、皆を護る。
エノーラのキュア・シリアス・ウーンズを確認し、私はフライを唱えた。
この時、私は敵の力量を見誤っていた。
いや、慢心が我々を過大評価させていたのかも知れない。
まさか、あんな事になろうとは。

▼前回までのあらすじ 『カッコいいロールプレイキター』 『しかし冷酷に”じゃあダイス振れよ”と言われてしまうのがD&D』 『甘いッ!〈交渉〉はキッチリとランク振ってあるッ!』 『……すげ […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第8話 —

▼前回までのあらすじ

『リッチを経箱なしでどうにかしちゃった方が、ネタ的には美味しくね?』
『いいねwwwwww』
『このクソNAGOYA共がwww』
(6話一部追記)

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

急転

翌朝、我々のところへジャルマース卿の使いがやってきた。
ドワーフ氏族の元への使者から連絡が無いらしい。
赤手の斥候隊に出くわした可能性もある、と言う。
一行には、案内役としてジョールが同行していたとの事。
「救出に行こう」
「そう言うと思っていました。神託の準備は無駄ではありませんでしたね」
「ああ。予定は少し変わるがな。ジョールが同行していたのは不幸中の幸いか」
「死霊王はどうするんです?」
「討ち倒すだけならいつでもできる」
オルトが香を焚き、ハイローニアスにコミューンを求める。
「……どうだった?」
「ジョール氏は生きています……無事とは言えないかも知れませんが、急げば間に合います」
「皆、戦いの準備を。私は”眼”を通す」
スクライングを唱え終わると、大鏡がジョールの姿を映し出す。
ジョールは、簡易な処刑台から吊り下げられており、ゴブリンに槍先で突付かれていた。
私が簡潔に(控えめな表現を用いて)説明すると、部屋が奇妙な沈黙に包まれた。
「……そうか」
ヘルシアがつぶやくのと同時にマス・コンヴィクションプロテクション・フロム・イーヴルが唱えられる。
続くブレスリサイテイションにあわせ、私もヘイストを準備する。
私がテレポートを唱える直前に、オルトのホーリィ・ソードがヘルシアのグレート・ソードに輝きを与えるのが見えた。
ゴブリン共が不運だったのは、我々が対死霊王用に呪文を準備していた事だ。
──悪く思うな。

強襲

そこは街道沿いの小さな駅家で、我々が降り立ったのは馬囲いの中央だった。
囲いの向こうには、数体のホブゴブリンと、エティンの姿が見える。
小屋の扉は叩き壊されており、辺りには嫌な匂いが立ち込めていた。
ジョウルが吊り下げられた処刑台に、乾いた血がこびり付いているのを見れば、既に何人かが犠牲になっているのは明らかだ。
「我等ハイローニアスの剣!悪を討ち倒す刃なり!」
ヘルシアの声が高らかに響く。
ゴブリン共が武器を構えるのと同時に、我々は動いた。
ジョールを吊るした縄が切られ、ゴブリンが両断される。
我々は容赦なくゴブリンを、ホブゴブリンを、エティンを討ち倒した。
30秒と経たぬうちに、その場に立っているのは我々だけになっていた。

救出

「──大丈夫か」
レッサー・ヴィゴーを。傷は深くない」
ドワーフ達へ贈る宝箱の錠前は壊され、馬車は見る影もなかったが、
幸いにも、金貨は手付かずのまま、小屋の中から見つかった。
傷を癒したジョールが、ぽつり、ぽつりと口を開く。
この街道で待ち伏せを受けていた事。
“獅子”達は、ジョールを助けようと懸命に立ち向かい、命を落とした事。
生き残った”獅子”達も、ジョールの身代わりとなり死んでいった事。
「……すまなかった。我々が、もう少し早く気がついていれば」
調べる方法はいくらでもあった。
スクライングセンディングを使っていれば、5人の”獅子”達は死ななくて済んだはずなのだ。
「……ハンマーフィスト氏族の所までの道はわかるな?」
「彼等は、ブリンドルのために命を落とした」
「残された我々に出来る事は、あらゆる手段を用いてブリンドルを護る事」
「そのためには、ドワーフ達の協力が必要なのだ」
ジョールが頷くのを確認すると、私はリーガル・プロセッションを唱え始めた。

同盟

日が沈む前に、我々はハンマーフィスト氏族館に辿り着く事ができた。
ジャルマース卿からの親書の事を告げると、氏族長への謁見はすぐに許可され、我々はドワーフ細工を凝らした部屋へ通された。
「──諸君等の置かれた境遇は良く解った……が」
威風堂々たる氏族長は、親書に一通り眼を通すと、わずかに渋い顔をして見せた。
「臆したと言われるかもしれぬが、長としては氏族を護る事を第一に考えねばならぬ」
「ならばこそ!ブリンドルで赤手を迎え撃たねばならない!」
声を荒げたのはヘルシアだった。
「ブリンドルが陥落したならば、赤手の進軍は、この一帯を焼き尽くすまで止まらないでしょう。
彼等はただのゴブリンの群れではない!竜を、巨人を、不死の亡者をも従えた猛悪なる軍団だ!
我々はそれをさせぬため、ハイローニアスの名の下に、秩序を護り、正義を成す為に立ち上がった!
貴公等の父モラディンも、そして貴公等もまた、秩序と正義を愛する者であるはずだ!」
誰も、何も言わなかった。
1秒、2秒と時間が過ぎ、やがて氏族長が口を開いた。
「──いいだろう。秩序と正義を持ち出されては、立ち上がらぬ訳にはいくまい」
「では」
「うむ。我等ハンマーフィストもまた、ブリンドルのために尽力しよう」

▼前回までのあらすじ 『リッチを経箱なしでどうにかしちゃった方が、ネタ的には美味しくね?』 『いいねwwwwww』 『このクソNAGOYA共がwww』 (6話一部追記) ▼プレイリポート(以下アドリアン視点) (プレイ結 […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第7話 —

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

帰還

翌朝、我々はブリンドルへ戻ることにした。
一度、作戦を練り直さねばならない。
経箱は赤手の本陣にある可能性が高く、奪い取るのは困難を極める。
だが、充分な準備と、幾許かの魔法があれば、それも不可能ではないはずだ。
「すぐにブリンドルへ戻るぞ」
テレポートですか。人数は?」
「私の力量では4人が限界だが、往復はできる」
『9レベルで5レベル呪文3回も撃てるのか……』
『特化型の本領発揮だ』
皆を集めて呪文を唱えると、私の世界は銀灰色に包まれる。
永遠のような一瞬が過ぎ去ると、我々は見慣れた石竜亭の一室に立っていた。
「……少々不安だったが、上手くいったか」
「あまり冷や冷やさせないでください」
その後、我々は手分けをして資金調達に走った。
入手した武器と鎧、マジックアイテムを次々と売り払う。
世知辛い話だが、死霊王を”どうにかする”ためには金が必要だ。

決断

『……マス・レッサー・ヴィゴーの24時間化に手を出すか』
『マジでやるのか……!?』
翌日の朝、私はエノーラに詰め寄られていた。
「アドリアン、私を連れて他の街へ跳んでください」
「……何があった?」
「ハイローニアス様が仰ったのです。”剣は折れてはならない”と!」
『それハイローニアス違うwww』
『邪神NAGOYAwww』
誰もが名前だけは知っている巨大都市へと跳び、力あるサイオンを探した。
そこでエノーラが何を知り、何に目覚めたのかは分からない。
だが、この日を境に、我々の戦いは一変する事になった。
『諸君!本日より、我々は高速治癒1を得る!』
『やりやがったwwwやりやがったwwwwww』
ブリンドル程の大きな街にサイオンがいないのが気にかかったが、その理由は後日判明することになる。
少々(いや、かなり)厄介なおまけが付いてきたのだが、それはまた別の話だ。
私達が戻ってくるまでの間に、ヘルシアとオルト達は買い物を済ませていたようだ。

死霊王対策会議

その晩、石竜亭の一室で我々は今後の計画を検討していた。
主題は当然、死霊王をどうするか、だ。
ただ倒すだけならば容易い話だが、リッチを経箱なしで滅ぼすのは非常に難しい。
困った時に頼りになるのは謎の神託だ。困った時だけとも言うが。
『つまり、まとめるとこういうことか』
『①ゲートをスクロールで展開し、無理矢理押し込んで他次元界へ放逐』
『②インプリズンのスクロールで呪文抵抗とセーヴを通す』
『③スパーク・オヴ・ライフでアンデッド属性を剥ぎ取り、能力値を0に。アンデッドは自然回復しないから、あとはバッグ・オヴ・ホールディングに詰めておく』
『④シノーンで魂をゲットして復活を阻止する。アンデッドの魂が捕れるかどうかは解らんが』
『①は放逐先で死なれた場合が面倒だな。最悪、自殺して戻ってくる可能性もある』
『②は確実で後腐れも無いが、確率が低すぎる。失敗したら撤退だ』
『そもそも①②はシナリオ範囲外のリソース投入になるのがちょっとな』
『③も確実だが、下手すると10ラウンド以上かかる。何人か死ぬかも』
『というか、善は③をやらんだろwww』
『④は……ちょっと調べる必要がありそうだ(できない事が後に判明した)』
『④で魂が捕れるなら確実なんだが。悪を討つライノズ・ラッシュが当たれば100点は確定だ』
……流石の神託も今回は悩んでいるようだ。
「……我々の取りうる手段としては、この程度ですね」
「経箱なしでも何とかならん事は無いが、リスクが高すぎるな」
「経箱の奪還の方が容易じゃないか?」
「だが、あいにく我々には経箱がどのような形をしているのかも解らん」
「見た事がなければ、占術に頼ることもできませんね……」
「赤手の本陣に潜入するのは危険過ぎるか……?」
スペリアー・インヴィジビリティで短期決戦はどうだ』
『透明化してても、誰かが身に付けてたら回収は無理じゃね?』
『悪を討つライノズ・ラッシュで殺してテレポートで回収。完璧!』
『待て待て待てwそれは騎士道に反するぞwww』
『ああー……そうか、ハイローニアス信仰じゃなければなぁ』
『キャンペーンの前提を丸ごとひっくり返すような事を言うなwww』
『くそう……見たことも無い、ってのがキツいなあ……』
『お前らがサールヴィス倒した後に帰っちゃうからだよ!』
『サーセンwww戦闘狂でサーセンwwwwww』
『戦闘しか頭になくてサーセンwww』
『シーアのサイオンに金を積むか?』
『究極占術、メタファカルティか!』
『……ああ、ダメだ。流石の天眼通でも手元を離れた経箱の位置までは解らんな』
『竜魔将一人ずつ調べれば解るんじゃ?』
『そいつは流石に金が足りねーっすwww』
「……考えていても、埒が明かんだろう」
「……そうですね。ハイローニアス様にお伺いを立てましょう」
「……そうだな。それがいいかもしれんな」
「とりあえず今日はこれまで。続きは明日の朝に」
「……異議なし」

▼プレイリポート(以下アドリアン視点) (プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください) 帰還 翌朝、我々はブリンドルへ戻ることにした。 一度、作戦を練り直さねばならない。 経箱は赤手の本陣にある可能性が高く、 […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第6話 —

▼前回までのあらすじ

『とりあえずリジャイアリクスと再戦といくか』
『経箱が手に入らない事実に対する現実逃避とも言える』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

早朝、出発の準備をしている我々の元へ現れたのは、ミハ=セレイニだった。
彼女は赤手の本陣に潜り込み、情報を集めてくるつもりだと言うのだ。
「……赤手の本陣に潜り込むだと?馬鹿な、自殺行為だ」
「大丈夫ですよ。こう言うの、得意なんです。それに……」
「……それに?」
「私も、この街の”獅子”ですから」
『ちょww死亡フラグ立てにきやがったwww』
『ここに来て足を引っ張るつもりか……!?』
神託が不安そうだ。私も不安だ。
彼女はおそらく、いや多分間違いなく死ぬ。
だが、止めても無駄なのだろう。彼女の目が、そう言っていた。
「呪文で馬を出すんですよね。1頭貸してもらえますか?」
「それは構わんが……9時間程で消えるぞ」
「好都合です」
ブリンドルの市門で馬を出し、我々は北へ。ミハは西へ。
我々は振り返らなかった。

再戦

リーガル・プロセッションによる早馬を使い、駆けること2日。
再度レストの廃墟にたどり着いた我々は、ウォーター・ブリージングウォーター・ウォークを使い、公会堂へ突入した。
公会堂の内部にはホブゴブリンとオーガが待ち受けていたが、対した脅威ではない。
グリースグリッター・ダストで制圧し、リーダーとおぼしきソーサラーをヘルシアが両断すると、残されたホブゴブリン達は武器を捨てた。
「……降伏する。命は助けてもらえるんだろうな」
「勿論だ。我々も、戦う気が無い相手を斬るつもりはない」
「命を奪うつもりはないが、いくつか聞きたい事がある」
「……我々に解る事であれば」
「リジャイアリクスはここにいるのか?」
「わからない。だが、我々はリジャイアリクス様に呼ばれて集まった」
「赤手の本軍について、何か知っている事は?」
「解らない。我々下っ端には何も教えられていない」
「元々、我々は西の街道を封鎖していた部隊だ。進軍にも参加していない」
「……お前達がここまで来たときの船があるだろう。それでここを離れるんだ」
「できるなら、赤手の本隊には戻るな。次に会った時に手加減ができるとは限らない」
ホブゴブリン達が船で離れたのを確認し、再度公会堂の中へと戻る。
リジャイアリクスが居るとすれば、おそらくは水の中だ。
『潜るしかないか』
『正直、水中は辛いんだよなあ……呪文が効かないし』
『最終的にヘルシアの一撃に頼るしかないのはいつもの事』
『ヘルシアにだけはフリーダム・オヴ・ムーヴメントだな』
私のファイアーボールブラスト・オヴ・フレイムは、水中で使うには難がある。成功率は8割程度と言ったところか。
しかし、リジャイアリクスとやりあうならば、万が一にも失敗はできない。
なんとかして、水上におびき寄せたいところだが……難しいだろうな。
『水中で飛行移動速度って有効なのかね』
『有効なはず』
『P.91を見る限り、立ちすくみになってもいいなら飛べるっぽいな』
『キャスター組は立ちすくんでも構わんだろ』
「潜るぞ。アドリアン、フライはあるか?」
「巻物を使っても3人分といったところだな」
「なら、エオリア、アシム、エノーラは上で待っていてくれ」
「……解った。最悪の場合は、2人を連れて上に跳ぶ。準備だけはしておいてくれ」
ヘルシアにフリーダム・オヴ・ムーヴメントを掛け、3人で水中へ飛び込む。
前に潜った時よりは、視界は幾分かマシなようだ。
「お前達か」
水中に声が響いた。竜独特の発声は、リジャイアリクスに相違あるまい。
「……近いぞ」
不慣れな水中を探りつつ、リジャイアリクスの姿を探す。
公会堂の中には見あたらない。だとすれば、外か。
「大きくなっているかもしれん。アドリアンは退がっていろ」
切り落とされた扉のすぐ向こうで、奴は我々を待ち受けていた。
気付いたヘルシアとオルトが盾になり、私は2人を壁に距離を取る。
だが、奴は水中に漂っているばかりで、襲ってくる気配を見せない。
「……なぜ構えない?」
「何をしに来た。経箱はもうここにはないぞ」
「お前達の”子”が孵るのを黙ってみてはいられんのでな」
「……なぜ、その事を?」
「私の知らぬ事など無いよ」
『超人発言キターwww』
……敵対する者と交渉する場合には、はったりの1つや2つは必要だ。
「そうか……だが、”子”も経箱も、俺にはもう関係が無い事だ」
「……何?どういう事だ?」
「俺は赤手を抜けた」
よく見れば、リジャイアリクスの鱗に刻まれた赤手の紋は、醜い傷跡で隠されていた。
『……え?』
『何この超展開』
……何が起きているのだ?
赤手を抜けた、というのはどういう事だ?

挑戦

「……どういう事だ」
「俺とサールヴィスは、赤手の為に命を賭けてきた。」
「だが、奴等はサールヴィスを弔おうともしなかった」
「サールヴィスの居ない今、赤手の連中に従う理由も無くなった」
『あー……なるほど』
『戦争中だし、仕方がない事ではある……が』
『納得はできないだろうなぁ』
複雑な心境だ。
敵対した以上仕方ないとはいえ、サールヴィスを殺し直接の原因を作ったのは我々だ。
だが、ここでそれを明らかにすると言う事は……
「お前が赤手を抜けたと言うのなら、我々がお前と戦う理由は無くなる」
「……が、お前は戦うつもりなのだな?」
「ああ。俺が勝てるかどうかはわからないが、サールヴィスの仇を取らずに去る事はできない」
やはり、弔い合戦……しかも、自身と我々の力量を知った上でなお戦うつもりなのか。
どうやら、このリジャイアリクスを普通のブラック・ドラゴンと考えてはいかんようだ。
「そのパラディンと、一騎討ちがしたい」
「……断る理由は何もない。受けて立とう」
ドラゴンとの一騎討ちなど、通常は考えられない事だが。
こう出られたのであれば、ヘルシアは断るまい。

決戦

『イニシアチブ振るのはヘルシアだけ?』
『うむ』
『ここに手は出せんよなぁ』
戦いは、およそ30秒ほどで決着がついた。
ヘルシアは善戦したが、相手が竜では手数で劣る。
虎の子のストーン・スキンは絹のように引き裂かれ、ヘルシアの身体が血に染まる。
『くそっ、先にバフ全部掛けておくんだった……!』
『一騎討ちを挑まれるとは思ってなかったからな……』
『挑まれてから掛けるのはハイローニアスの教えに反するから仕方ない!』
解っている。解ってはいるが……今、ここでヘルシアを失う訳にはいかんのだ!
『DM!次ラウンドから俺も動く!イニシアチブを振る!』
私が走り出すのよりわずかに早く、リジャイアリクスの爪がヘルシアを切り裂く。
ヘルシアの身体が力を失い、前のめりに倒れる。
(──いかん!)
直感的に悟る。これでは間に合わない。
私が何をするより早く、奴の翼と牙はヘルシアの身体から魂を引き剥がす。
……そう、思ったのだが。
何が起きたのか、奴の翼が叩き付けられる前に、私の手はヘルシアに届いた。
すかさずディメンジョン・ドアで引き剥がす。
オルトがキュア・クリティカル・ウーンズを唱えるのを見ながら、私はリジャイアリクスに相対した。
「……続けるのであれば、ここから先は私が相手になろう」
決死の覚悟だったが、リジャイアリクスは首を横に振る。
「……得られる物は何もなかった。もういい」
「鐘楼の下にある物はお前達の好きにするがいい」
そう言うと、リジャイアリクスは小さく加速をつけ、空へ舞い上がった。
みるみるうちにその姿は小さくなり、やがて北へ向かって動き始める。
ヘルシアが目を覚ましたのは、リジャイアリクスの姿が見えなくなってからだった。
「……私は、負けたのか」
「ああ……負けた」
「なぜ、生きている?」
「奴が……リジャイアリクスが、翼を止めた。そう見えた」
「……そう、か」
「なぜ、リジャイアリクスは止めたんでしょうね」
「さあな。私にも解らん事はある」
「いずれ、再戦する事になるのかな」
「さあな。」
鐘楼の1階部分へ潜ると、リジャイアリクスの残したと思われる財宝と、いくつかの奇妙な卵が見つかった。
「どうする?」
「これからあの落とし子共が生まれるかと思うとぞっとせんな」
「なら、割るまでだ」
すべての卵をたたき割った我々は、ティリ・キトルの集落へ向かう事にした。
ホブゴブリン達の使っていた小舟が残っていた事は幸いだった。
その晩、我々は夜遅くまで寝る事ができなかった。
私はもっと強くなる事を誓い、一人目を閉じていた。
おそらく、他の皆も同じだろう。

▼前回までのあらすじ 『とりあえずリジャイアリクスと再戦といくか』 『経箱が手に入らない事実に対する現実逃避とも言える』 ▼プレイリポート(以下アドリアン視点) (プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください) […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第5話 —

▼前回までのあらすじ

『3章が始まりません』
『おまえらが経箱取らないから!取らないから!』
『戦闘狂でサーセンwww』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

交渉

『街道沿いならともかく、レンジャーなしで荒れ野に入ったら迷って死ぬね』
『馬を潰しながら無理矢理加速してるだけだしね』
翌日、私はアシムと共にカール女史の元を訪れていた。
女史が、死霊王の住む”茨の荒れ野”の地図を持っている、と言う話を耳にしたからだ。
経箱が手に入ればその足で、手に入らなくとも近いうちに死霊王の元へ向かう事になるのは間違いない。
急な申し入れにも関わらず、カール女史は我々のために時間を割いてくれた。
ここからが問題だ。女史が、地図を手放す事に同意してくれるかどうか。
死霊王の縄張りの地図ともなれば、簡単には値段が付けられまい。
財布が空になるぐらいは、覚悟しておかねばな。
「”茨の荒れ野”の地図をお持ちですね?」
「……あの不毛の土地に、一体どのような用が?」
ヘルシアのように人を惹きつける力があるならともかく、私に出来る事といえば、ありのままに全てを話す事だけだ。
経箱を入手できなかったこと、再度リジャイアリクスを倒しにレストの廃墟へ向かう事、そして、経箱を取り戻す事ができなかった場合は、死霊王と戦う覚悟もあることを伝えると、女史は盛大に笑い、首を横に振る。
「やめておきなさい。あれは生あるものには手を出せぬ存在。死にに行くようなものよ。……まあ、その覚悟だけは評価できるけれど」
「我々も無駄に死ぬつもりはありません。何とかして経箱を取り返し、死霊王とは交渉するつもりでいます」
もっとも、そう考えているのは私だけなのだろうが。
ここに連れて来たのがアシムだけでよかった。
他の4人は、ハイローニアスに直接の誓いを立てている。
アンデッドとの交渉は、受け入れがたいものだろうからな。
「……状況はよく理解できました」
「それでは」
「ですが。商売を生業とする者として、商品をタダでお渡しする事はできませんわね」
「……ならば、いかほどで譲っていただけますか?」
「この地図に値段をつけるつもりはありませんの」
わずかに微笑んだかと思うと、女史の顔から笑みが消える。
「この地図の対価として、ひとつ、約束をしていただけないかしら」
カール女史に見据えられて、私は思わず息を飲んだ。
商売人に金貨以外の物を要求されるほど恐ろしい事は無い。
“対価”の内容によっては、破門される可能性もある。
「……私に出来ることであれば」
少し悩んだが、私は頷くことにした。我々には、選択の余地が無いのだ。
「そんなに難しい事では無いわ」
「あなた方が、この街のために最後まで力を貸してくれる、と」
「そう約束して頂けるのなら、この地図をお渡ししましょう」
その言葉を聞いて、私はようやく脱力した。
何のことは無い。我々が女史を信用していなかったのと同程度には、女史も我々を信用していなかったのだ。
「我々は、この地の脅威を討ち払うために遣わされたハイローニアスの剣。邪悪を前に猛ることはあれど、臆することは決してありません。この戦争が終わるまで、我々はこの街と共にあります」
「結構。では、この地図をお渡ししましょう」

余談

「経箱が手に入らなかった時はどうするつもりなのかしら?」
「その時は、死霊王を打ち倒すまで」
「……経箱なしで、リッチの相手をすると?本気で言っているの?」
「勝算はあるのです」
「……まさか?」
「最も、高い数字では無いですが。おそらく4割。相撃ちを良しとしても6割」
「……何者なのですか。あなた達は」
「先ほども申し上げましたが」
「我々は、この地の脅威を悉く討ち払うために遣わされたハイローニアスの剣です」

▼前回までのあらすじ 『3章が始まりません』 『おまえらが経箱取らないから!取らないから!』 『戦闘狂でサーセンwww』 ▼プレイリポート(以下アドリアン視点) (プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください) […]

赤い手は滅びのしるし -戦神編- 2章 第4話 —

▼前回までのあらすじ

「いかん。昨日の事なのにまるで思い出せん……年かな」
「ぶっちゃけ1年経ってますからね」

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

念視

「今のうちに、リジャイアリクスを念視しておくべきでは?」
「ふむ……まあ、街中であれば呪文を残しておく必要も無いか」
普段ならば、何があっても1つ2つは呪文を覚えなおす余裕を残しておくのだが。
あのブラック・ドラゴンが気になるのもまた事実だ。
念視の準備を整え、マス・ダークヴィジョンスクライイングを唱えると、大鏡に黒竜リジャイアリクスの姿が映り、何者かの声が聞こえた。
「──おまえの功績は充分に讃えられる。今は身体を休めよ。傷が癒える頃には、子等も目覚めるであろう」
リジャイアリクスはわずかに頷くと湖底へ潜り、見覚えのある石造りの建物へと身を泳がせる。
建物の中には、簡素な墓標が立てられていた。恐らくはサールヴィスのものだろう。
「──と、言う事だ」
「”子”ですか。嫌な予感がしますね」
「レストの廃墟へ戻らねばなるまいな。準備してくれ」
「明日出るのですか?」
「いや……出るのは3日後だ」
リジャイアリクスと再戦するのであれば、ヤツの鱗を貫くための武器が必要だ。
幸いにも、ブリンドルには《魔法の武器防具作成》の心得がある者が何人かいる。
ヘルシアのグレート・ソードと、オルトのロングボウを預け、宿へ戻る。
帰り際、ティリ・キトルの民から譲り受けたロングソードをヘルシアに差し出す。
「大事な剣だろう。いいのか?」
「騎士が帯刀してなくては様にならん」
「助かる。ありがとう」
「折るなよ。魔法の剣とはいえ、アダマンティンほど丈夫では無いぞ」

散策

『街の地図はこれ』
『……なんで北が上じゃないんだよ』
翌朝、我々は石竜亭を出て、街をぐるりと散策した。
不慣れな街で個々に行動するのは好ましい事ではない。
途中、聖歌隊の子供達と楽しげに歌っているミハに出会ったが、憩いのひと時を邪魔をするのも悪いだろうと思い、その場は声を掛けずに立ち去った。

襲撃

その晩、窓の外から歌声が聞こえるのに気がついた。
「何でしょうね」
「寝るには少し早いし、見に行ってみるか」
歌声に誘われるままに歩くと、やがて大聖堂広場へたどり着いた。
広場には人だかりができている。
中央には大きな篝火が焚かれているようで、歌声はその周りから聞こえてくる。
聞き覚えのある歌声は、昼間の子供達のものだろう。
我々が遠巻きに眺めていると、エオリアが空を見上げている。
「どうした?何を見て……」
「来ます!」
篝火が吹き飛んだ。薪と火の粉が舞い散り、人々が悲鳴を上げて走り出す。
ヘルシアがロングソードを抜き放ち、人々を掻き分けて前に出る。
崩れた篝火の上に立っていたのは、竜と獅子と山羊の首を持つ魔獣キマイラだった。
その肌には、赤い手型の墨が入っているのが見える。
まずい。人々が狙われれば、かなりの被害が出る事になる。
グリースグリッターダスト……いや、呪文が間に合うか?
我々が動くよりもわずかに早く、3つの口が開かれる。
「なるほど!ハイローニアスの騎士とやらは、お前達の事か!」
魔獣が篝火の残骸を踏み越えて迫る。
ありがたい。ヤツの目は我々に向いているようだ!
ライノズ・ラッシュから悪を討つ突撃!76点!』
『挟撃による急所攻撃!』
ヘルシアが一刀で竜と獅子の首を叩き落とす。
残された山羊の首が口を開くよりも早く、エオリアの短剣が胸に突き立てられる。
首を失った魔獣が倒れ、石畳に血が広がると、人々の悲鳴は歓声に変わった。
我々が人々から解放されたのは、それから2時間後の事だった。

▼前回までのあらすじ 「いかん。昨日の事なのにまるで思い出せん……年かな」 「ぶっちゃけ1年経ってますからね」 ▼プレイリポート(以下アドリアン視点) 念視 「今のうちに、リジャイアリクスを念視しておくべきでは?」 「ふ […]