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赤い手は滅びのしるし -戦神編- 3章 第2話 —

▼前回までのあらすじ

『俺は良心的プレイヤーを辞めるぞ!DMーッ!』
『俺はNAGOYAになるッ!この《信仰力呪文修正:呪文24時間持続》でだァーッ!!』

▼プレイリポート(以下アドリアン視点)

(プレイ結果を元に捏造分が含まれています。ご注意ください)

失策

我々が瞬時に体勢を立て直したのを見て、ハーフフィーンド・ビーヒアは逃げの姿勢に転じる。
背中の翼が大きく動き、その巨体が浮きあがった。
逃がすわけにはいかない。ビーヒアが死霊王と手を結んでいる可能性もある。
多少無理をしてでも、ここで討ち倒しておかなくては。
今、我々の行動を気取られるわけにはいかないのだ。
「上を取るぞ!」
ヘルシアとオルト、そしてエノーラを引き寄せ、ディメンジョン・ドアでビーヒアの頭上へ。
即座にフェザー・フォールを唱え速度を殺す。
オルトがシアリング・ライトを放つ。
ビーヒアは苦し紛れにダークネスを唱えるが、エノーラのデイライトが闇を打ち払う。
これで、王手。続く一撃は、ヤツの首を切り落とすだろう。
私の期待に応えるかの様に、ヘルシアがグレート・ソードを担ぎ叫ぶ。
ライノズ・ラッシュ!」
『じゃあ機会攻撃から組み付きに入る』
『げ。つかみ強化かよ!』
『やべぇ、呑まれた!』
『ぎゃあああ!?』
ヘルシアの剣が届く寸前、ビーヒアが大きく口を開く。
次の瞬間、ヘルシアの姿が消えた。
──まずい!
『やばい、死ぬ!これはマジ死ぬ!』
『癒しの手は!?』
『……間に合わない。直前の酸ダメージでhp-10になる』
『……だめだ、詰んだ』
ヘルシアを飲み込んだビーヒアは、そのまま空を飛び去ろうとする。
その背後から放たれたアシムの弓が、ビーヒアを撃ち落とす。
「ヘルシア……!」
「何と言う事だ……」
急いでその腹を切り裂いたが、既にヘルシアは事切れていた。
ヘルシアの遺体を腹の中から丁重に救出し、バッグ・オヴ・ホールディングへ詰め、テレポートを唱えた。
フリーダム・オヴ・ムーヴメントをかけるべきだった……!』
『ヘルシア実はACもhpも低いからな……』
『パーティ全体が攻撃偏重だしなぁ……』

再起

誰も、口を開こうとしなかった。
常日頃から、死は覚悟している、と自負してはいたが、象徴であるヘルシアの死は、予想以上に重いものだった。
私とて、それは例外ではなかった。
だが、ここで挫折するわけにはいかない。
ブリンドルの、人々の運命が、かかっている。
再起しなくてはならない。そして、戦争に勝利する事で取り返すのだ。
自分にそう言い聞かせ、心の表面を塗り固める。
私の……いや、我々の心は、折れてはいけないのだ。
「オルト。リザレクションの準備をしてくれ」
「……呪文は、準備できますが……ダイヤモンドが必要です。そして、私達には……それだけの資金がありません」
「金貨は200枚足らずを残して、全部使ってしまいましたよ」
「捻出したとしても……この先戦えなくなってしまう」
私は立ち上がり、傍らのヒューワーズ・ハンディ・ハヴァサックを手に取る。
小さな皮袋を取り出し、テーブルの上に白金貨を積み上げると、皆の目が丸くなった。
「白金貨で500枚ある。明日の朝までに、ダイヤモンドを調達してくる」
「……どこから、そんな大金が?」
「我々は手に入れた白金貨には1枚も手をつけていなかった、という事だ」
皆が溜息をつき、苦笑する。
苦笑とはいえ、笑顔は笑顔だ。
「……参りましたね」
「……欺いていたのは敵だけでは無かった、と言うことか」
「何を人聞きの悪い事を。ハイローニアスに誓って、私は嘘は吐いておらんよ。金貨と銀貨が何枚あるかは、常に答えておったしな」
『パーティの財布たる者は、本当の所持金を明かしてはならない』
『彼等は常に最後の1cpまで使ってしまおうとするからだ』
そんな話を聞いたのはいつの事だったか。
誰から聞いたかも覚えていないが、薀蓄は私の中に生き、こうして役に立っている。
「……何にしろ、私達にはまだやれる事がある……そうですね?」
皆の目に輝きが戻ったのを確認し、私は小さく頷いた。


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